行儀と品性

歌舞伎囃子方で指導者でもある田中佐太郎さん(女性です)が、弟子の教育について、こんなことを話しています。

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うるさく言うのは姿勢や目線など舞台での行儀。技は回数を重ねればできるが、行儀は仕込まなければ身につかない。

 

技術は教えなくても、場数を踏んだり真似ることによって修得可能。つまり、みずから学ぶことができる。しかし、行儀はそうはいかない。適切な師匠による仕込み、すなわち手取り足取りの教育が必要だということなのでしょう。その違いは何でしょうか。

 

 

小津安二郎に、こんな言葉があります。

「品行は直るが、品性が直らない」

 

田中さんの言葉は、これに通じるものがあるように思います。

 

品行は心がけ次第で時間をかけて直すことができる。また知性も努力次第でなんとか獲得できる。しかし、品性はそうはいかない。人生のある特定の時期に、師匠とも言うべき人から集中してすり込まれなければ、一生に身に付かないものなのでしょう。(残念ながら・・・)

 

そして、品性を身に付ける上で、もっとも効果的なのが行儀なのかもしれません。(耳が痛い・・・)美しい行儀が基本にある品性は、あらゆる芸に現れます。口で説明するのは難しいのですが、品のある芸は確実にあるのです。

 

 

これは、ビジネスの世界でも同じだと思います。どんなに儲ける技術に長けていても、品性に欠けていれば長期的には成功できないのではないでしょうか。特に日本のような、長期的関係を大事にする社会ではそうでしょう。

 

では、企業でどのように行儀を仕込むことできるのか。それは家庭でしかできないことなのか。企業の人材育成の中には、行儀の要素も入っているはずです。それは、マナーというレベルではありません。企業の価値観をすり込むことが、その企業における行儀仕込みなのでしょう。では、どんな価値観を?

 

品のない組織には、品のない個人しかいないものです。芸に品性が出るように、個人だけでなく、企業の行動にも品性が現れます。それを、今一度確認してみる必要があると思います。

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このページは、福澤が2010年5月19日 18:32に書いたブログ記事です。

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