井上ひさしさんに次いで、免疫学者で能作家でもある多田富雄さんが、昨日お亡くなりになりました。
私は多田さんを「免疫の意味論」(大仏次郎賞)で最初に知ったのですが、免疫学者としての学識は言うまでもありませんが、その文章の巧みさと教養の深さに感銘を受けたものです。免疫の意味論
青土社 1993-04
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その後いくつかのエッセーも読むようになり、多田さんは小鼓の名手で能への造詣にも並々ならぬものがあることを知りました。数点の新作能の作者でもあります。しかも、2001年に脳梗塞で倒れて半身麻痺になってから、ほとんど創られたと思います。国立能楽堂でも、何度か車いす姿の多田さんをお見かけしました。
また、口がきけなくなってしまったにも関わらず、創作の一方で、自らの体験にも基づき政府の医療政策へ猛烈な批判の論陣を張っていました。また、そうした自らの姿と心を「寡黙なる巨人」(小林秀雄賞)
寡黙なる巨人
という本で主観的かつ客観的に表現されました。傑作でした。ちまたに「知識人」と呼ばれる人はあまたいますが、多田さんのような方こそ真の「知識人」だと思います。
倒れて以降の多田さんに、本当に大きな強い人間の姿を見るような気がしていました。
また巨人が逝ってしまいました。心からご冥福をお祈りいたします。
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