日米企業にとっての組織開発の意味とこれから

これまでも何度か組織開発に関して書いてきましたが、私なりに整理してみたいと思います。

 

組織開発に関する私の問いは以下です。

1)なぜアメリカ企業では組織開発が大きなテーマになっているのか

2)なぜ日本企業では、これまで組織開発は大きなテーマになっていないのか

3)日本企業において、それが今後どうなっていくのか

 

以下に、私見を書いてみます。

1)アメリカ企業と組織開発

・個人の自律性を重視する欧米企業では、リーダーの指示により社員が決  められたタスクを遂行することが一般的だったので、レポートラインは重要だが集団の力を高めることへの関心は低かった。

    80年代日本企業の躍進を驚異と感じ、強みの源泉を探った結果、組織能力にポイントがあると分析、その開発の重要性に着目した。

    個人の自律性を重視する米企業にとって、それは容易ではなかった。しかし、日本企業に学びながら、「組織開発」の手法をシステマチックに進めていった。

 

2)日本企業と組織開発

・集団志向の強い日本企業では、組織図上で箱をつくり、その管理者とメンバーを箱に書き入れれば「組織」ができあがった。つまり、ムラと同じ人間集団すなわち組織だった。そこでは、リーダー(管理職)の権限は総じて強くはなかった。

    高度成長期をむかえ、急速に拡大する会社組織を適切に管理するために、管理職の能力向上が喫緊の課題となり、アメリカから感受性訓練(ST)が導入された。

    そもそも自律性の強いアメリカ社会での、集団相互関係強化の手法であるSTを、凝集性の強い日本企業組織に導入した結果、個人パーソナリティーの変容をもたらす即効性のある訓練との誤解を一部で生んだ。その結果、自己の殻を破るためとのロジックで、性格破壊の弊害も見られるようになった。

    その反動で、STの目的の一つである「組織開発」という言葉へのアレルギーが広がっていった。一方、経営環境の変化に乏しく、基本右肩上がりの成長を続ける日本企業では、米企業と比べ組織開発の必要性も高くはなかった。

 

3)これからどうなるか

・日本企業で、組織開発が必要なかった背景が現在急速に変化している。例えば、以下の傾向は今後さらに強まることでしょう。

 -経営環境:安定→不確実性へ

 -組織凝集性:強い→弱くなりつつある

 -構成要員の同質性:高い→低くなりつつある

 -戦略理解の必要性:あまり必要ない→組織末端まで必要

 -マネジメントサイクル:比較的長期→短期化

 -ミドルの役割:マネジメント層と現場の仲介役→プレイングマネジャーという名のプレイヤー

 -既存組織を超えた相互依存性:低い→高くなりつつある

・米企業では戦略面においても、トップダウンではない現場レベル(下レイヤー組織)からの創発を促す傾向が強まるだろう。そのためにも組織能力の強化はさらに進んでいくに違いない。

 

 

このような環境のもと、日本企業もプロアクティブに組織の効果性を高める必要に迫られているのではないでしょうか。呼び方は、職場開発でも組織開発でも何でもいいのですが、STの失敗を繰り返さないためにも、日本企業の歴史や風土に根差した活動にしなければなりません。まだまだ個人の自律性が高くないことを前提に、個人の開発と組織の開発を並行して行う難しさがあるのです。

(ここでは単純化のため、米企業と比較していますが、EUや中国、韓国企業との比較も必要ですね。)

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このページは、福澤が2010年4月15日 12:13に書いたブログ記事です。

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