コンサルティングは、クライアント企業の依頼を受けて、活動し最終的に成果物を自ら完成させて提出することが普通でした。いわゆる医者と患者の関係です。
このような従来型のコンサルティングでは、患者は病気になるたびに医者にかからなければならないという宿命にあります。また、医者も複数のコンサルタントからなるチームで対応せざるを得ず、必然的にコストも高いものになります。
しかし、最近異なる動きが広がりつつあるようです。クライアントは、コストをできるだけ抑える必要性と、社内にコンサルティングのノウハウを蓄積する、すなわち内部の能力開発を同時に行うために、クライアントメンバーのプロジェクトチームに、コンサルタントが一人加わり、問題解決を図るというパターンが増えてきているのです。
クライアント側はそのやり方により、コア人材の育成とノウハウ蓄積、そしてコスト削減の一石三鳥を狙います。一方コンサルタント側も、ある意味で手足となる人材はクライアントが提供してくれるので、コンサルファームから独立してもやっていけるというメリットがあります。つまり、個人コンサルタントの活躍の場が広がっているとも言えます。
ただし、そこでコンサルタントに求められスキルは、コンサルファームにおけるスキルと一部異なります。当たり前ですね。コンサルとしての能力も経験も不足している(ほとんどない)クライアント側のメンバーを、うまく使い、しかも育成までを視野に入れなければならないのですから。名選手必ずしも名監督ならずと同じで、このスキルシフトは実はそう簡単ではありません。クライアント側メンバーを育成するとは、将来の自分の仕事を代替する人を育てるということでもありますし。
ところで、企業内研修の文脈では、研修の場で教育しながらもビジネスに直結する成果を期待する傾向にあります。つまり、人材開発と問題解決/コンサルティングが、両方の側から近づきつつあるわけです。
もう一つ。ある社内プロジェクト(例えばブランド再構築プロジェクト)における育成もOJTといえますが、これまで社内のリーダーが担ってきたOJTにおける育成責任を、外部のコンサルタントに担わせるという、いわばOJTの外部化が起こっているということもできます。
現在は、あらゆる部分で従来型の境界がなくなる、ボーダレスの時代です。過去のパラダイムに執着せず、軽やかに境界を越えるしなやかさが、実は競争力の源泉になるのかもしれません。
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