モチベーションの罠

最近、モチベーションという言葉が、何かと殺し文句になっているように感じます。

「そんなことをしたら社員のモチベーションが下がってしまう。」

 

確かに、昔と比べて社員のモチベーション維持に、管理職や経営陣が苦心されているのはわかります。非定形業務が増える中、組織生産性は社員のモチベーション次第という傾向になっています。社員のロイヤリティーも昔ほど高くなく、気に入らなければ退職、というのも珍しくはありません。なので、社員のモチベーションに神経をとがらせているわけです。

 

長期的な生産性向上を期待できる施策(情報開示、複数キャリアトラックなど)の理由として、それが使われるのはいいのですが、できない理由としてモチベーションが使われることも多いように思います。「上司が部下を強く指導できないのは、部下のモチベーションに配慮しているから」といった場面です。

 

マネジメントとは、組織構成員に対して「短期の苦労を厭わず、長期的な恩恵を追求させる行為」ということができると思います。いいかえれば、短期的には苦痛が増えてやる気が低下するかもしれないが、それを克服することができるだけのビジョンを示し、勇気づけることこそがマネジメントなのです。

 

何事も短期と長期があります。最も安易なマネジメントは、将来のメリットを先食いし、今の満足度を高めるような行為です。(政府の国債発行がまさにそうですね。)こういう施策の理由として、モチベーションが頻繁に活用されている気がしてなりません。

 

だとすれば、経営者(管理職)の能力と「モチベーション」の使用回数は、逆相関にあるのかもしれません。もちろん、考えもなしの「俺についてこい」型マネジメントは論外ですが。

 

モチベーションという、なんとなく耳障りのいい「横文字」には、注意が必要です。心して使いましょう。

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このページは、福澤が2010年3月 8日 14:26に書いたブログ記事です。

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