一方的に影響を与える力の源泉には、権威と権力と武力の三つがあると考えます。企業社会の中にも、その三つが生きています。
少し古い話題になりますが、日産のV字回復が成功したのに、カルロスゴーンCEOの存在は非常に大きいでしょう。もちろん彼の能力によるところ大ですが、それだけでしょうか?外国人だから、日本的なしがらみに捉われなかったからでしょうか?そうではないでしょう。彼が、日産ではなく大株主のルノーに雇われたCEOだったからだと思います。つまり、ガバナンスが変わったことが、変革成功にとって決定的に重要だったと思います。
ガバナンスが変わった場合、その力は絶大です。有無を言わせぬ力を持ちます。いわば「武力」のようなものです。逆らったら、殺されるのです。したがって、最後の最後に行使されるべきでしょう。警察や軍隊と同じで、規律には必要ですが、常に武力に脅されていて、活き活きと働けるはずもありません。
「権威」とは、正統性といいかえていいでしょう。創業者の権威も強力です。株式の保有は、武力の源泉ですが、創業者の権威は、必ずしも保有株式によるものではありません。創業一族の保有株式比率が、わずかになっても、影響力を行使出来ている上場企業はたくさんあります。
また、実績の積み重ねが名声を、そして権威を生みだすこともあります。
権威は、非常に情緒的なものです。だから、逆に継続的に影響力を保持できるのかもしれません。
最後の「権力」とは、一方が、もう一方に益をもたらす、あるいは損を強いる権限を持っているということです。その基盤にあるのは、損得です。
権力は最もあやういものです。相対的なものだからです。その時点での力関係を基盤にしているにしか過ぎません。さらに、損得を超えてしまったら、権力は何の意味も持ちません。
かつての固定化された企業社会であれば、半永久的な権力もあったかもしれませんが、今やそれも幻です。わかりやすく言えば人事権です。あるいは発注会社が下請け会社に無理を押しつけるのも、権力です。流動化が進んだ社会では、ますます権力の基盤は揺らいでいます。
これからの企業経営を考えるうえで、武力・権威・権力の意味をよく理解したうえで有効に活用するだけでなく、それら以外の影響力の源泉も見つけていかなければならないのでしょう。
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