ビジネススクールのこれから

昨日の日経朝刊「経済教室」で、一橋大学のアメージャン教授が、近年のビジネススクールの変化について書いています。その変化とは、以下4点だそうです。

1)    ビジネススクールがグローバルに広がっている

2)    研究に力を入れるようになっている

3)    社会起業が重視されるようになっている

4)    教授法が、ケース・メソッド中心からフィールドスタディ、ゲーム、シミュレーション、コーチングなどへシフトしている

 

4)    の背景としては、全人格教育を目指すべきだとの考えがあるという。自己認識能力や対人能力を高め、経営にとどまらず世界が抱える問題の知識を深め、能力を実地に試す機会を与えるようになったという。そして、それらは日本企業が得意とする分野であり、日本の企業や大学が世界に貢献すべきと言っています。

 

私の解釈は、かつて欧米のビジネススクールとはハードスキルを学ぶところだったのだが、それでは企業のニーズに応えられないことがわかったので、ソフトスキルを重視するようになったというものです。ハードスキルとは、ファイナンスやマーケティングのように科学的に学ぶことができるスキルであり、ソフトスキルとは、リーダーシップやモラールのように体験的にしか学べないスキルのことです。

 

ハードスキルはどんどん、ロジック中心の科学の方向に進みました。ビジネススクールの教授の論文には驚くほど数式がたくさん出てきます。ビジネスマンはほとんど見たことがないような。それは、教育の専門分化も促したことでしょう。それが、研究重視の方向なのかもしれません。(専門化、科学化は教員にとって望ましいことのようです:DHB 20059月号参照)

 

 

私はケースメソッドが減少しているのは、その必要性が減少したからではなく、本当のケースメソッドをリードできる教員が減少しているからではないかと踏んでいます。科学化の方向性とケースメソッドは必ずしも一致しないのです。なぜなら、ケースを教えるにはある特定の分野の知識だけでは無理です。ケースは素材であり、様々な分野から切り込むことができます。自分が苦手の方角から質問が来たら、なかなか答えられるものではありません。でも、経営は総合的・統合的なものなのです。

 

そのような場合、優秀な教員は、その分野に詳しい学生に議論を振るでしょう。そういった、臨機応変なインタラクティブ能力が重要なのです。でも、これも科学化と一致しません。

 

全人格教育も重要ですが、それを大学に期待すべきなのでしょうか?ビジネスには、ハードスキルもソフトスキルも必要ですが、その議論は時代遅れの感がありませんか。本当にビジネスパーソンが学ぶべきなのは、情報が不足して不確実な状況で、いかに意思決定の精度を上げ、その実行を推進するかです。その観点から、カリキュラムもそして、教員の質も見直すべきなのではないでしょうか。

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このページは、福澤が2009年11月17日 19:02に書いたブログ記事です。

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