一昨日、移転なった山種美術館へ、「速水御舟展 -日本画への挑戦」を観にいきました。
速水は40歳で早逝した天才ですが、その短い画歴の中で、何度も新しい試みを行っています。評価された自分のスタイルに安住する気など、さらさらないかのように。
こんな言葉を残しています。
「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い。(中略)登り得る勇気を持つ者よりも、更に降り得る勇気を持つ者は、真に強い力の把持者である」
すごい言葉だと思いませんか。登った頂きに満足するのが、ほとんどの人間だと思います。あえて、そこから降りる勇気、そして再び登り返す勇気、これを本当の勇気だというのではないでしょうか。
失敗したから、もう一度挑戦するという勇気、これも貴いものですが、彼はそういう明らかな失敗はしていません。失敗していないにも関わらず、評価された自己をいったんご破算にして、新たな道を切り拓こうとするのです。これは、安定や高い評価、実績を失う可能性もあるわけですから、いわゆる再挑戦よりさらに難しいことだと思います。
しかし、彼にとってはそういう安定や名声など、どうでも良かったのでしょう。そんなものよりも、常に描きたい理想の絵があり、それを追求せざるを得なかった。これは、常に葛藤を抱えることになり、苦しい道でもあったはずです。だからこそ、勇気が必要なのです。
晩年、夫人に、「これからは売れない絵を描くから覚悟しておけ」と告げていたそうです。
速水の絵は、単に美しいだけでなく、意思と勇気、そしてそれから滲みだす凄みが感じられます。そんな速水の絵から、勇気と励ましをもらった気がしました。
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