採用投資VS育成投資

2003年ごろから昨年までは、企業の新卒採用熱が、バブル期以上に高まったような印象を受けました。人材系のフォーラムでも、採用支援や新卒教育(というより退職回避策)を手がける企業の顔ぶれが、圧倒的に増えたように感じました。

 

特に、4月に一斉入社と同期管理を慣例とする日本企業では、新卒採用の重要性は言うまでもありません。しかし、一方では年功制や終身雇用は維持できないと公言する企業も珍しくありません。

 

そこまで採用に時間とお金を投入しても、社員と会社双方の理由での退職率は高まっているのではないでしょうか。そう考えると、ちょっとおかしな気がします。

 

高い費用をかけて採用した社員への育成投資は、どの程度かけているのでしょうか?相対的には、あまり育成投資にはお金をかけていないのでは。それはなぜでしょうか?

 

        とりあえず採用しておけば、後は何とかなる。できる人間は伸びるし、そうでなければ脱落するまでだ。そもそも社員は育てるものではなく、育つのだ。

        育成投資にお金をかけて、その結果能力が高まったら転職されてしまう。

        採用活動の成果は、採用人数と出身大学名で計測でき、他社とも比較しうる。負けるわけにはいかない。それに対して、育成効果なんて図れない。

        育成は、職場でマネジャーが担う仕事だ。(部下育成もマネジャーの評価項目に入っているし)

 

若手育成は大事だと、常に経営者も人事もいいますが、実は本音にはこんなことがあるかもしれません。

 

人事の方と話していると、採用担当と育成担当は仲が悪いとしばしば聞きますが、そりゃそうですね。 

 

いずれにしろ、このような構造は、世界的に見てもかなり異常だと思います。日本企業のおかれている環境はあらゆる面で激変しているというのに、採用と育成の構造は、変わるどころか、ますます強化されているように思います。(さすがに今年は採用投資を絞るでしょうが)

 

私は多くの企業の研修(若手から経営幹部まで)に関わって、それぞれの社員の能力を肌で感じてきましたが、企業を横断してみた場合、いわゆる学歴と仕事のできは、あまり相関は大きくないと感じています。入り口の優秀さより、入社後の職場での育成環境のほうが遥かに仕事の成果に結びついていると思います。職場での育成環境、それを一言でいうと、「学びを是とするか、指示通り動くことを是とするか」に関する組織としての意思あるいは文化だと思います。

 

同じ条件であれば、競争をくぐり抜けてきた高学歴社員が成果を出すことも多いでしょう。でも、企業によって育成環境という条件は全く異なるのです。そのことがもっと着目されてしかるべきだと思います。

 

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このページは、福澤が2009年10月23日 18:17に書いたブログ記事です。

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