言葉のちから

単なるかけ声やスローガンでは、ひとの心を動かせません。

 

「戦争反対」「憲法九条を守れ」とどれだけ叫んでみたところで、残念ながら「自分とは関係ない」と思う人がほとんどではないでしょうか。

 

 

辻井喬さん(堤清二さん)は、その代わりに詩の力を信じているそうです。

辻井さんの本からの引用です。

 

詩はスローガンではありませんからね。そういうとき私が引用するのは「わたしが一番きれいだったとき」という茨木のり子(1926-2006)さんの詩なんですね。その詩を一部引用しますとね、

 

(前略)

わたしが一一番きれいだったとき

まわりの人達が沢山死んだ

工場で 海で 名もない島で

わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

 

わたしが一番きれいだったとき

だれもやさしい贈り物を捧げてはくれなかった

男たちは挙手の礼しか知らなくて

きれいな眼差だけを残して皆発っていった

(後略)

 

ここには、反戦という言葉は一つも使われていません。けれども、辛い戦争時代の自分の心を日常性に即して絞り出すように表現しています。これが本当の反戦詩です。(「ポスト消費社会のゆくえ」上野千鶴子との共著 より)

 

 

情報を伝える言葉と、心を伝える言葉は、どれだけ似て非なるものなんでしょう。本当の言葉の力を思い知らされたような気がします。

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このページは、福澤が2009年10月20日 21:21に書いたブログ記事です。

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