井戸の掘り方を教える:ラーニング・エンジニアリング

「水を与えるより、井戸の掘り方を教える」という言葉があります。

一般にコンサルタントは、ある特定分野における水を授けることを生業とします。いわば情報格差の価値です。

 

でも、永遠に水をもらい続けなければなりません。だから、与えるほうのうまみは絶大です。

 

私がかつていた戦略コンサルの世界も同じです。情報と加工ノウハウで、アウトプット(コンテンツ)を創り授けるのです。決して、情報収集と加工のノウハウは伝授しません。

 

コンテンツを重視する時代は、それで十分でした。多少、高いお金を払ってもコンテンツそのものに価値があったのです。

 

 

時代は変わり、今はコンテンツそのものより、コンテンツを創りだす能力が競争力の源泉になりつつあります。コンテンツは、陳腐化しますが、能力はうまく使えば陳腐化どころか向上します。つまり、井戸の掘り方の価値に気付いたのです。

 

私も約15年前、戦略コンサルタントから、社員が戦略を策定する能力を高めることを支援する役割に変えました。その後世間でも、戦略策定(思考)ノウハウをコンサルタント自身が伝授する書籍が、たくさん書かれ、読まれるようになりました。ネタばらしと言えなくもありません。

 

 

先ほどお会いしたグローバル人事のコンサルタントに伺ったのですが、人事制度構築も同じ世界に突入しつつあるようです。人事制度はまさに目に見えるコンテンツです。それを構築する能力を高め、社員自らが構築することを支援するようなサービスが現れているそうです。コンサルタントに構築してもらうより、はるかに安価ですし、かつ社員に構築能力を移転できます。

 

企業のコアスキルに付随する付加価値の高い外部サービスの多くは、このように内製化に向かうはずです。(一方で、非コアスキルのアウトソースはさらに進むでしょう。)

 

 

ある井戸の掘り方自体は、専門スキルかもしれませんが、掘り方を学ぶ能力は汎用スキルです。つまり、汎用スキルとしての学習能力の重要性が飛躍的に高まっているわけです。

 

逆に言えば、「学習を促進させるスキルや仕掛けを組織に埋め込むこと」が裏側の競争力の源泉なのです。私は、それをラーニング・エンジニアリングと呼んでいます。

 

組織のコアスキルは事業環境によって変化します。何が現在の組織のコアスキルであり、それをどう学習し高めるか、そこに着目することが必要なのではないでしょうか。

 

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このページは、福澤が2009年7月24日 18:34に書いたブログ記事です。

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