SWOT分析、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、3C分析・・・・、これからはいわゆる経営戦略を学ぶに際して、必ず登場する分析ツールです。経営戦略=これらのツールを学ぶこと、としている書籍や講座もあるほどです。
神田昌典氏も先週の週刊東洋経済でコメントしていましたが、これらはほとんど20年以上前に提唱されたものです。少なくとも私が20年前にビジネススクールにいた時には、既に定番でした。
考えてみればおかしな話です。これだけ経営環境の変化が激しいにもかかわらず、20年以上前のツールが有難く教えられている。それらの有効性がなくなったわけではないとしても、せめてそれらを超える考え方やツールがもっと一般的になってもいいのではないでしょうか。
このような現象は、日本においてだけではないかと思います。では、なぜ?
以下は、私の仮説です。
複雑な問題を、ある程度誰もが理解できるように概念化し、その解法をパッケージ化し大衆化する。それによって、広く問題解決の手法が流布する。これが、アメリカ企業や経営学界のアプローチです。
もちろん、そこでのパッケージ(ツール)は、汎用的なものではなく、状況に応じて活用者がうまく使いわける性格のものです。ツールを知っていることより、使いこなすことに意味がある。当然のことです。
しかし、それらが日本にもたらせられると、そうは理解されません。極端に言えば、問題解決の魔法の杖と捉えられるのです。なぜか?
日本での学びでは、古来より「型」を重視してきました。型とは、一子相伝で代々伝承される家の秘法のようなものです。伝承される方は、その有効性などに疑問を持ってはいけません。ただ、間違いなく記憶し、有難く使用するのみです。他の選択肢はないのです。また、それに代わるものを見つけようともしません。従っていれば、間違いないのです。それが型です。いわば、それさえ知っていれば間違いない、魔法の杖です。
経営ツールを輸入した際に、ツールを型と無意識に解釈したのではないでしょうか。型ですから、それに疑問も持たないで、ただひたすら使い続ける。
輸入業者は、魔法の杖とは言わないでしょうが、受け入れる側がそう勝手に期待すること自体は悪いことではありません。そうして、何となく双方で魔法の杖の幻想が膨らんでいく。
お気づきのように、これは単に経営戦略の分析ツールやフレームワークだけのことではありません。
巷で売れている手軽な経営本や自己啓発本は、ツールをさも型や魔法の杖だとの共同幻想の結果売れているような気がしてなりません。たとえ高価な大工道具を手に入れたからと言って、家が建てられるわけもないのです。
何にしろ、本質を学ぶことは難しいものです。
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