昨日、大日本印刷と集英社、講談社、小学館といった既存書籍川上ビジネスの大手が共同で、ブックオフ・コーポレーションの株式の三分の一弱を買い取ることを発表しました。
これにはとても驚きました。再販制度のもとで、新刊本を発行印刷する企業にとって、その枠外で中古本を販売するブックオフは、いわば仇敵です。新刊本不況の原因のひとつはブックオフだ、と言われるくらいです。それが、手を組むと言っているわけですから、驚くのも無理ないでしょう。
ブックオフは経営難に陥っているのですから、本件に関してが受け身の立場でしょう。既存体制破壊を唱えてブックオフを創業した坂本氏も、もう経営陣にはいないので、大株主のファンドのなすがままなのかもしれません。
しかし、既存連合もこのご時世、資金に余裕があるわけではないでしょう。なのに、この買収です。その意図はどこにあるのでしょうか。まだ、報道されていないので、勝手に推測してみましょう。
それを考える上でのポイントは再販制度の存続か否かだと思います。既存大手にとって、再販制度は価格維持でき、既存チャネルである中小書店を守ってくれる、有難い制度でしょう。ただ、制度の下で、大量の書籍が書店から戻ってきます。印刷部数の4割弱が返本され、出版社の在庫(ほとんど破棄)となり、出版社の資金繰りを苦しめています。
ならば、印刷部数を4割減らせばいいと思いますが、そうしたら書店に並ばず、販売部数も大幅減少してしまうに違いないのです。だから、4割のロスを覚悟で刷り続けざるをえません。
書店も、売り場に並んだ4割の本を返品する作業も、それは大変な重労働です。だから、卸しから届いた段ボール箱を開封もせず、そのまま返品することも中小書店では、珍しくないそうです。
再販制度は、書籍という文化の源を、広く日本全国に流通させるための仕組みだと思います。東京にいるとなかなかわかりませんが、地方や田舎の中小書店に入ると、そのありがたさを感じることがあります。
既存勢力は、再販制度をどうしたいと考えているのでしょうか?
1)なんとしても維持したい
2)維持したいのはやまやまだが、それは不可能なので、廃止を睨んで手を打ちたい
3)既に役割を終えたので、廃止の方向で進めたい
もし1)だとすると、既存大手にとって今回の買収の意味は何でしょうか。以下、仮説です。
・再販制度破壊の首謀者たるブックオフを傘下において、動きを封じ込める。また、再販にこだわらない他社が買収することを防ぐ。
2)だとすると、
・どうせ再販制度がいずれなくなると、書籍も完全自由競争となる。その際は、販売力のある大手書店チェーンを持っているかどうかが勝負の分かれ目になりそう。ブックオフの運営力と店舗網を手に入れることは魅力的。
ただし、この意思決定が本来望んでいない再販制度廃止の引き金になりかねないので、やはり再販制度廃止を時間の問題だと認識しているのだろう。
3)だとすると、
一気にこの機会に、業界が雪崩を打って再販制度廃止の方向に意見を変えることを促す。潮目を変えるアクションである。そして、その後の業界変動の主導役を目指す。
果たして、どうなんでしょうか?
既存勢力が、業界の敵を傘下に入れるという非常に珍しいケースなので、今後の動向に目が離せません。
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