将来のゴールを設定し、現在とのギャップを埋めるべく行動することが戦略だという考え方は、広く浸透しています。また、個人のキャリアを考える際も、ビジョンやゴールからブレークダウンすべきだという論調も多いでしょう。
でも、それほど将来のことを読めるのでしょうか。果たして、一年前に現在の経済状況を予測できた人がいるでしょうか。
経営戦略論は、大きくはポジション重視派と資源重視派に分かれます。ポジション重視は、将来有利になるポジションを読んで、そこに向かっていこうと考えます。資源重視派は、先どうなるかわからないが、どうなってもいいだけの経営資源を蓄えておこうと考えます。最初に述べたのは、ポジション重視派の考えに基づいています。
週間東洋経済の今週号(2009/4/25号)に、任天堂の岩田社長のインタビューが載っています。
「(前略)任天堂が革新的なコントローラーを生み出したから(成功した)と言って下さる方がいます。(中略)もし、大画面の薄型テレビが普及していくタイミングと合わなかったら、これほどWiiは遊んでいただけたでしょうか。(中略)薄型テレビが居間に入った。すごくいい視聴環境ができたので、家族みんながそこに集まるようになった。しかも、商品が薄くなったので、テレビの前でリモコンを振るスペースができたのですね。
では、それを読みきってWiiを作ったかというと、そんなことはないのですよ。『大画面テレビが普及するから、これからのゲームは高精細だ』という予測はあった。ただ、絵がきれいになっただけでゲームから離れたユーザーが戻ってくるとは思えないので、任天堂はあえてその路線を行かずに別の方向に動いた。ここは理屈です。けれども、薄型テレビの普及がWiiリモコンへの支持を高めると予測できたかというと、そうではないのですよね。」
「企業文化の持つ意味も大きく、考え続けている人たちに囲まれていると、新人もそのDNAに自然に染まるという循環がある。任天堂はその中で動いているのではないかと思います。」
「(前略)努力には際限がない。一方で、結果がでるかどうかは天の時に恵まれるかどうか次第。だから、結果が出たら幸運に感謝しましょう、結果が出なかったら自分達に何が足りなかったか考えましょう。それが任天堂にこめられた意味ではないですか」
任天堂では、将来が読めるという驕った考えは持たず、ひたすら最重要な経営資源たるヒトにこだわってきたようです。謙虚に足下を見続け、ひたすら考え続けることが最大の戦略なのでしょう。
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