クラフトマンシップ

東大大学院教授の姜尚中さんが、「若者と職場をつなぐキーワードは『クラフトマンシップ』だ。徒弟制度で腕を磨き、顧客と情動的なやりとりをすることに日本の若者は興味を持っている。」と書いておられました。

 

その理由を推測するに、

    師匠との濃密な関係を通じて、技を獲得できるから

    自分にしかできない何かを表現できるから

    形として目に見えるモノを生みだすことができるから

    生みだしたモノを介して、社会とつながる実感を味わえる

 

といったところでしょうか。こういうものに若者が憧れるということは、それらが今の社会に欠乏しており、かつ必要としているからだと考えられます。

 

自分が生み出したモノによって社会とつながるという喜びは、意外にどんな人間でも持っていると思います。芸術家であっても、自己表現の発露としての作品を観て共感してもらいたいと思っているはずです。豆腐屋さんも、自分が作る美味しい豆腐によって、お客さんに喜んでもらいたいと思っているでしょう。

 

しかし、大企業の組織の一員として、その喜びを味わうことは、実はそれほど簡単ではありません。でも、「大人になるということは、そういうことなんだ」と自分に言い聞かせて、芸術家にも豆腐屋さんにもならず大企業に就職していく。

 

ところが、それはもうそろそろ適切な道とはいえなくなっているのじゃないか、と若者は直観的に気づいているのではないでしょうか。

 

先日、東京都美術館の「生活と芸術 アート&クラフト展」を観てきました。19世紀後半のイギリスで、行き過ぎた工業化の反動として、アート&クラフト運動が興ったそうです。

 

 

アート&クラフト展.jpg 案外、若者は炭鉱のカナリアと同じかもしれません。その鳴声を敏感に聞き取り、社会を変えていくことが、今の大人に求められているのではないでしょうか。これは、決して昔に戻ろうということではありません。21世紀にふさわしい『クラフトマンシップ』を見つけていくことだと思います。

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このページは、福澤が2009年3月 9日 12:36に書いたブログ記事です。

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