個別解と普遍解

昨日、ある講師から経営幹部向け研修の内容について相談を受け、意見交換をしました。その際、受講者が求めるのは、個別解なのか普遍解なのかについて議論になりました。

 

受講者の特性やレベルによって、講師への期待内容が変わります。あるグループの受講者は、自分が業務ですぐ使える解答、つまり個別解を求めます。研修内容が、自分の属する業界や業務とかけ離れていると、役に立たないと考える傾向にあります。たとえば、メーカーの技術者にサービス業の企業の事例を語っても、自分とは違うという態度をしばしば取ります。

 

別のグループの受講者は、必ずしも個別解を求めません。個別事例を使って考えさせるよりも、普遍的な答えを求める傾向にあります。例えば、「(それが普遍かどうかは別にして)グローバルスタンダードではどうなんだ」とか、「理論的には、正しいのか」といったことを気にするようです。普遍解を知りたいという単純な好奇心もあるでしょうが、普遍解から自らの個別解に展開することができる能力を備えているのでしょう。研究者や大学の先生の講義を、もっとも有効に活用できる人たちです。

 

最後のグループは、普遍解であろうが、別の個人にとっての個別解であろうが、あまり気にしません。自分の仕事とは程遠い仕事に関するノウハウ、すなわち個別解からも自らの個別解に解釈し直すことができるのです。

  他者(講師含む)の個別解 → 普遍解 → 自分にとっての個別解

こういう思考ができる人は、オープンな姿勢を持ち、どんなものからも学ぶことができる、学習能力が高い人なのです。

 

このような人には、できるだけ多くの事実をぶつけることが望まれます。しかも、できるだけ生々しいリアルな事実です。表面的な事実や理論をいくら提示しても、なかなか満足しません。講師の(極端に言えば)人生をさらけ出すような、真剣なぶつかり合いを求めているのです。講師にとって、楽な相手ではありません。しかし、うまくいった場合の受講者の学びの深さは、講師冥利につきるものでしょう。また、講師自身が学ぶことも多くあります。

 

講師にとって、対する受講者グループが、上記のうちのどれに属すかを見極めることが大切です。それによって、多くの抽斗の中からどれを選ぶかが決まってきますし、アプローチも決まってきます。

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このページは、福澤が2009年2月13日 15:27に書いたブログ記事です。

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