落語に三題話というのがありますね。寄席で、お客さんから出された何の脈絡もない三つの言葉を使って、ひとつの話を創るという、あれですね。例えば、「屋根とノーベル賞とホームレス」、これらを使って、不思議なほど見事な話を創りあげます。
与えられた三つの言葉を使わなければいけないというのは、大きな制約です。でも、
制約があるから、面白い話が創れるとも考えられるのではないでしょうか。池に、三つの小石を同時に投げいれたとします。三か所にばらばらに落ちて、それぞれが波紋を広げます。そして、どこかで波紋が重なります。屋根という言葉には、さまざまなイメージが含まれており、それがどんどん頭の中で膨らんでいく。同じように、ノーベル賞やホームレスからも、イメージがどんどん膨らんでいく。そして、どこかでそれらが重なるのでしょう。
経営もそれと似ているように感じます。たくさんの制約、つまり足枷の中で、結果を出していくのが経営と言えるでしょう。ホンダが自動車で成功の礎を築いたのは、1972年にアメリカの厳しい排気ガス規制をクリアするためにCVCCエンジンを開発したことによるといわれています。また、トヨタのカンバン方式も戦後、資本が不足している中で生産を拡大するために生みだされたそうです。足枷があるから、それをクリアするために想像力と創造力を駆使して突破口を見つけ出すのが人間です。三題話と同じで、制約は足枷ではなく、創造の種なのかもしれません。
敗戦後しかり、オイルショックしかり、公害問題しかり、バブル崩壊しかり(円安の貢献は大ですが)、日本人は制約を梃に進化する力が優れているのではないでしょうか。
そういうスタンスで現在自分が置かれている状況を見渡してみれば、また違った世界が見えてくるかもしれません。
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