経営のトレードオフで

845_shop1.jpg経営はすべてトレードオフです。

Aを選ぶとBがだめになる。Bを選ぶとAがだめになる。

 

熊本に味千ラーメンというチェーンがあります。以前、何度か食べたことがありますが、積極的に海外展開も図っていると最近知りました。

 

その会社の上海にあるスープ工場が不良品を出したそうです。袋詰めのスープが分離してしまった。納期は刻一刻と迫る。「袋から開けて加熱すれば商品にできる」と、現地のコンサルタントが言うのを押しのけ、社長は全品廃棄を指示し、大きな損失が出る道を選んだ。

 

短期の視点では、加熱すべきでしょう。味に大きな変化がなければ、損失を回避することが経営者の務めです。しかし、長期の視点では、廃棄すべきとの判断もあります。それまで品質第一でやってきたのに、ここでごまかして妥協すれば、それを見て、真面目に汗水たらして工場で働く現地従業員のモチベーションが下がり、いずれブランドの劣化を招く。この社長は、長期の視点で判断したのです。これが高価なブランドものならともかく、ラーメンです。でも、社長は廃棄した。これは、合理的判断なのでしょうか。

 

経営のトレードオフにおける判断は、どの期間で評価するのかと、何と比較して評価するのかによって決められるのではないかと思います。ここでは、期間の問題でした。長期を選ぶことには勇気がいります。何しろ、目先のことはわかっても、将来はどうなるか分からないのですから。そうです、不確実性が高いのです。そして、責任ある人間は、少しでもリスクを回避したいものです。確実な短期を、不確実な長期より選びたいものです。もちろん、それが正しいこともあるでしょう。でも、そうじゃないことも当然あります。その時に、リスク回避の誘惑に負けないで意思決定できるかどうか。

 

管理された楽観主義と勇気と信念、これらを持つ経営者が、不確実性の高い経営環境に立ち向かっていけるような気がします。

 

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このページは、福澤が2009年2月 3日 15:49に書いたブログ記事です。

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