EU包括合意は「欲本主義」の転換点となるか

経済運営の肝は、いかに節度を持って中庸を意識するかだと思っています。加熱しすぎた景気は金利引き上げなどで冷やすべきですし、好景気に浮かれる企業は転換点を冷静に予測し過剰在庫を持たないようにする必要があります。また個人レベルでも、例えば株取りにおいての損切りの売却や利益確定の売りも、行き過ぎを戒める歴史の知恵でしょう。良すぎる状況も悪すぎる状況もいずれ反転するのは歴史が証明するとおりです。ただ、そのタイミングを判断するのが、感情すなわち欲をも持つ人間にとっては難しいのです。

 

「好ましい状況は、このままずっと続くと思いたい」と多くの人は考え、さらに多くの人々は「いつか爆発するだろうが、今ではない」と根拠のない自信を持つ。こういう人々が過半数を超えれば、それへの反論は「意気地なしのぼやき」とレッテルを張られ、退けられることになるでしょう。

 

80年代後半の日本のバブル、90年代後半のアメリカのITバブル、00年代のアメリカの住宅バブルとそれに付随する高レバレッジ経済化、さらには2002年ユーロ創設後のユーロ圏内南方諸国におけるユーロメリットによるバブルとそれに便乗した北方諸国の大銀行の貸付競争、全て「欲が目をくらませた」ことが引き起こした人災です。

 

東日本大震災によって露呈した、日本の原子力ムラの実態も、ある意味この程度の被害で表に出て良かったのかもしれません。さもなければ、欲の続く限り行きつくところまでいったでしょうから。

 

大きく成長している時には見えなかった綻びが、低成長ないしマイナス成長となった時点で一気に見えてくることは、どの世界でも常識です。だから無理してでも成長しようとするのですが、それがさらに傷を広げる構造です。そのエンジンはやはり「欲望」です。高成長環境において、欲望は幸福を拡大させるパワフルなエンジンです。しかし、低成長となったら、それは不幸を拡大させるエンジンにもなりうるのです。

 

したがって、成長の構造的転換点を冷静に見定めることが何より重要になります。感情を排してクールに。もし、見定めることができたら大きく様々

houkatu.jpgな仕組みを組みかえる、あるいはギアを入れ替えることが必要です。その役割は、国家であれば政治家、企業であれば経営者です。我欲を持たず客観的に自社会も組織も見透す、そんなリーダーがいるかどうか、最後はそこにつきます。

 

EUでは、各国首脳による10時間もの議論を経て、包括合意がまとまったそうです。それがどれだけ効果的なものなのか、さらにどこまで実行できるのかはわかりません。しかし、長い歴史の知恵を育んできたEUの努力が、過去20年以上続いた資本主義ではない「欲本主義」を修正させるための第一歩となってほしいと切に願います。また、福島第一原発事故も・・・。

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このページは、福澤が2011年10月28日 11:07に書いたブログ記事です。

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