映画「三等重役」を観て:情報結節点としての人事

㈶日本能率協会主催のHRMセミナーに参加した翌日に、「三等重役」(昭和27年東宝)を観ました。

 

HRMセミナーのテーマは、「人事のネットワーク力」でした。人事は、経営者、事業ライン、外部とのネットワークを、もっと強化しなければならない。ネットワーク力が高い人事ほどラインからも評価され、業績も良いということでした。

 

翌日観た映画では、古い日本企業の雰囲気を十分味わうことができました。会社は家であり、社長は家長。家長は、家族ひとりひとりの生活に深い関心を持つ。こういう牧歌的な風景でした。

 

三等重役.jpg 

森繁久弥演ずる人事課長が社長に最も近く、一緒に難問奇問?に対していくのですが、その距離感がいいのです。単なる腰巾着ではなく、情実入社には断固社長に反論を主張したりしますが、社長もそんな一筋縄ではいかない人事課長を信頼しています。

 

人事課長は社内のあらゆる情報の結節点となっているようで、だからこそ社長も彼を信頼しているのでしょう。当時は高度成長の直前ですが、すでに組織はその準備ができていたようにも感じます。高度成長期にもっとも欠乏していた資源は人材でした。人材を采配する人事部や労務部の力は、今では想像できないほど大きかったそうです。森繁の上司たる現社長も、以前は人事課長だったという設定です。社長を代々輩出する部門が、その会社の本流であることは今も変わりません。

 

その後、営業、マーケティング、技術開発、財務など機能の重要性も高まり、相対的に人事部の地位は低下します。その結果、それまで人事部が担っていた、社内の情報結節点が次第に消滅していったのかもしれません。

 

ところが、ナレッジエコノミーに世の中全体が変わっていくにつれて、あらためて情報結節点が重要になっています。ネットの活用で、情報流通量は飛躍的に増大しましたが、それらを束ね、解釈し整理する機能が、以前に増して必要になっています。これは、システムでなく人間にしかできないことです。ナレッジは、基本的には人間が創出し、加工します。だから、人材(人的資源という言い方もしますが)を司る人事部門のネットワー力が、あらためて求められているのではないでしょうか。先祖がえりではないですが、「三等重役」の頃の家族的企業のエッセンスを、現代の企業組織にも導入することができたらなあと、映画を観て感じました。

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このページは、福澤が2009年3月14日 12:01に書いたブログ記事です。

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