思考の枠を外す

年齢を重ねるということは、経験やそれに付随する知識が蓄積されていくということです。実際に記憶していることはそれほど多くはありません(特に最近・・)が、いつか必要な時に必要な引き出しの中から出てくるものに違いないと、かすかな期待もしています。だから、読んでそのまま忘れてしまうような本も、せっせと読む。

 

しかしそういった煮こごりのような知識が、足枷になることも徐々に増えてきます。思い込み、(勝手な)常識、前提などなどが、新しい思考を妨害するのです。これはどんな人にも等しく訪れる落とし穴に違いありません。だから、それが当然だと認識し、意図的に予防を図る必要がある。成功体験が多ければ多いほど、意識したほうがいいでしょう。

 

日経ビジネス4/7号の「澤田秀雄氏の経営教室(第一回)」に、澤田氏がその方法について書いていました。ちょっと長いですが引用します。

 

人間は知らないうちに自分の思考に枠をはめてしまうので、視線も興味があることにしか行きません。その枠を外さなくては、新しいものは見えてきません。

そのためにはまず、世の中にはいろいろな考え方の人がいるということと、自分には物事の一面しか見えていないということを絶えず意識する必要があります。そのうえで、同じ物事をどういう角度で見ているのか、他の人の意見を聞くことで思考の枠が外れていく。

 

自分の思考やものの見方を認識するために他人を鏡として使用するということでしょう。鏡に映った自分の姿に目を背けるのでなく正視し、主体的に修正を試みる。また、澤田氏はもう一つの方法にも言及しています。

 

思考の枠を外すもうひとつの手段は、数字を見ることです。(中略)数字はウソをつかないので、余計な「常識」が入り込む隙がありません。

 

かつてダイエーの中内社長は、店舗を巡回して細かいことまで指示を出していったそうです。しかも、それがことごとく的を射ていた。対照的に、セブンイレブン・ジャパンの鈴木社長は、店舗に足を踏み入れずPOSデータだけで指示を飛ばしていた。こちらも、驚くほど的確な指示だったそうです。鈴木氏はこう言っていました。店舗を巡回すると余計な情報がたくさん入り込んできて本質が見えなくなる、だからウソをつかない数字だけで判断する。中内氏も鈴木氏も、自分の得意な方法で本質に迫っていたのです。正解はありません。

 

さて、他人の意見にしろ数字にしろ、いかに主観を取り除き客観的にものごとを見るかが重要なのでしょう。しかし、人間は感情の動物であり、それを排除することは非常に難しい。それは、ある意味「個」を捨てることです。一方で、今ほど明確な「個」を確立することが求められている時代はありません。個を確立しつつ個を捨てる、そんな難しいことに挑戦し続けることが一生のテーマなのかもしれません。

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このページは、福澤が2014年4月15日 16:56に書いたブログ記事です。

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