FR柳井社長の大方針転換!

今朝の新聞各紙にファーストリテイリングが、国内に3万人いるパート・アルバイトのうち1.6万人を正社員とするとの記事がありました。ブラック企業と叩かれた同社でもあり、世間のベ-スアップなどの雇用重視の流れに従ったものにも見えますが、もっと深い意味がありそうです。

政府の要請によりしぶしぶベースアップに応じた大企業とはスタンスが異なります。まず非正社員の否定すなわち、正社員主体で業務遂行するという大方針を示したことがまず大きな違いです。(現在正社員約3400人に対してパート・アルバイトは3万人)さらにその目的が、従業員への雇用保障や配分を増やすという厚生面にあるのではなく、あくまで世界で勝つことであり、その手段の一つとして正社員化があるということです。

 

では、どうやってFRを世界一にしようとしているのか。柳井社長が3/11の幹部向け講演(「FRコンベンション」)でそれを語っています。(それを読んでいただければいいですが、ポイントを列記しておきます。)


・世界一になるには世界最高の店の集合体でなければならない

・そのためにそこで働く従業員の働き方を変えなければならない

・店長だけでなくスタッフ全員が経営者となり独立自尊の商売人にならねばならない

・スタッフは機械と違って取り替えがきかないので、スタッフが成長できるように支援し、長期間働ける環境を整備する

・少数精鋭とし、チームとして支えながら結果を出す

・スタッフ全員に経営情報を開示する

・店長は、自分の時間の9割をスタッフとの対話に使え

・販売員には今の二倍の効率を求める。その代わり雇用は守る

商売の結果に応じて報酬が決まるようにしていきたい。

・何のために生き、使命は何かをスタッフ一人ひとりに問い続けろ

・本部発ではなく店舗発で会社を変えていきたい

人の言うことを聞いて、疑いもなく作業する人はいらない。何が最適なのか、自分がやるべき仕事が全体から見てどうなのかを考えてもらう。そして、「これが自分の店だ」「自分が誰よりもこの店に貢献している」と思えるように変えていきます。

・(自分が)「この店」と決めたら、「こういう店にします」と宣言してもらって、最低3年間は、そこで店長をしてもらう。店長自ら商売する店舗を選び、販売員は店長の仕事ぶりを評価する。本部も同じです。部員が、部長やリーダーを評価する制度に変えていく。

・ 誰でも夢があると思います。どんなに小さな夢でも、一人ずつが夢を持てる会社にすること。その実現に向けて、歩んでください。

 

チェーンストアは一般にトップダウン組織ですが、柳井社長はボトムアップの組織に変えたいと言っています。つまり、現場の知やダイナミズムが全社を動かしていくように「会社の仕組みを180度変える」と宣言したのです。これは、サムソンの李会長が1993年にフランクフルトで幹部に行った有名な「妻と子供以外は全部変えろ」演説に匹敵する内容だと思います。

これまで柳井社長の鶴の一声で動いてきたトップダウンの典型だった同社をボトムアップに変えることは、柳井社長自身が最も変わらなければならないことを意味します。もちろんそんなことは百も承知でしょう。トップダウンでない方法でボトムアップを推進するという、大難問に柳井社長は立ち向かうことになりました。この大方針転換をどう実現させていくのか。


柳井社長はこうも述べています。経営者意識を持ってほしい社員に対する言葉ですが、自信にも向けていることでしょう。


私は、経営者には、2つしか仕事がないと思っています。

 一番大事なのは教育すること。経営者は全員、教育の担当であり、人事の担当でないとダメ。それが一番大事です。

 もう1つが利益責任。利益がなければ誰も幸福になれません。今日の生活があるのは、利益を上げてうまくビジネスをしているから。そのお陰で今、存在できているわけですから。

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このページは、福澤が2014年3月20日 11:34に書いたブログ記事です。

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