「決められない会議」を脱する方法

 

仕事の多くは集団で行われます。そして、集団における意思決定は、「会議」の場でなされることが多いでしょう。もちろん、会議には意思決定のための会議以外にも、意見を出させるためのもの、ある意見や方向性を浸透させるためのもの、バイインさせるためのものなど、いろんな目的で使われます。

 

それはそれで分析対象としては興味深いのですが、今日は意思決定のための会議について考えてみたいと思います。

 

会議には意思決定すべき課題、テーマがあります。たとえば、価格をいくらに設定するか、取引先の提案を受諾するかどうかなどです。前者は一つの数字に決める必要がありますが、後者はYES/Noを決めるという違いはあります。しかし、Yes/Noを決めるためには、なんらかの損得について考量しているはずです。

 

つまり、課題は突き詰めればなんらかの数字のレベルにまで分解されている必要があります。でなければ、他の選択肢との比較もできません。

 

でも多くの会議では、数字に分解されませんし、されたとしても大した根拠もなく「決め打ち」していることも多いようです。数字のレベルにまで分解してはじめて対話が始まると言えるでしょう。対話とは、勝ち負けを決める議論ではなく、異なる意見や考え方をぶつけ合って、さらにいい意見をつくり上げることです。そうです、アウフヘーベンを狙うことです

 

そのためには、参加者が意見を持っていることが大前提になりますが、さらには考えをぶつけるための共通の材料が必要になります。たとえば、ある製品の価格を設定するための会議だとしましょう。1000円に設定したとすれば、いくら売れそうか、それが1500円になったとすればどう変化するかを考える必要があります。もちろん、仮定に過ぎないわけですが、対話するには仮説という参加者共通の材料が不可欠です。それを梃子にして対話が展開されるからです。こういった材料、梃子(あるいは支柱)がなければ議論は迷走し空中戦となり、時間ばかりかかる不毛な会議となります。

 

そのために「たたき台」があるのではと思われるかもしれませんが、「たたき台」は決め打ちのひとつの意見に過ぎません。支柱ではなく、片隅に浮いているひとつの船です。

 

対話の梃子となる仮説をつくり上げる時に必要な思考ツールは、シミュレーションです。シミュレーションをするには、あるモデル、わかりやすくいうとストーリーが必要です。そのストーリーを数字とその関係性で表現したものがシミュレーションモデルです。それができれば、あとは変数をいろいろ動かしてみて結果の変化を試してみることです。このプロセスを、会議のメンバーで共有すれば、一つの支柱の周りに様々なアイデアが創出され、効果的な対話がなされます。そうして、最終的に適切な一つの結論が導かれ、意思決定がなされるわけです。

 

以上の意思決定プロセスにおいて、抜け落ちがちなのがシミュレーションの発想とその実行だと思います。だから空中戦ばかりになって決められない会議が続くことになるのではないでしょうか。

 

シミュレーションというと、なんだか難しい数式を駆使した分析ツールのようですが、それは一つの側面であって、あくまで適切な意思決定を導く対話のための材料、ツールだと割り切ることが大切だと思います。

 

決められない不毛な会議ばかりで疲れている方、是非試してみてください。

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このページは、福澤が2012年7月10日 17:41に書いたブログ記事です。

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