創造性が必須の事業では、組織規模を拡大することは困難だという定説があります。創造性と組織は、水と油の関係だからです。しかし、それにチャレンジし成功しつつある企業があります。面白法人カヤックです。先日カヤックの柳澤社長の話を伺う機会がありました。
面白かったのは、組織戦略と事業戦略を明確に峻別し、その上で組織戦略を重視することを明言し、実行していることです。さらに、それらをシンボル的活動と実益的活動に分け、4象限に整理し、それらのバランスを常に意識して経営していることです。
そこには、面白法人カヤックという企業自体をブランディングするという強い意志がはたらいています。企業をブランディングするとは、常に面白企業を証明するような施策を(製品サービスではなく)外部にコミュニケーションし続ける必要があります。これは創造性の源となる優れた社員を引き続けることに効果があります。
さて、では規模拡大しながら創造性を失わない秘密は何でしょうか。ひとつは、
「つくる人を創る」というシンプルな経営理念を、浸透させることです。そのためには、多大な費用と時間をかけています。
ふたつめは、社員の職種をWebクリエイターの3種、プロデューサー、プログラマー、デザイナーに絞っていることです。バリューチェーンのほかの機能は、基本すべて外部パートナーに委ねる潔さが仕事の純度を高め、組織拡大に伴う創造性を必要としない内部コミュニケーションコストを増大させない仕組みができているのです。さらに、人事評価は三つの職種の中だけでなされます。創造性に関してもっともシビアに評価できるのは競争相手だからでしょう。
みっつめは、徹底した言葉へのこだわりです。先日糸井さんについてでも書きましたが、経営者が創造性豊かな人々を動かす(表現はわるいですが)力の源は、彼らの心に刺さる言葉を発することができるかどうかだと思います。人徳とか企業文化とか姿勢とか理念とかいろいろありますが、結局それらを伝えるのは言葉なのです。柳澤社長は、社内に発する場合でも、プロのコピーライターと相談しながらつくるそうです。
カヤック=柳澤社長は、これらをなんとなくやっているのではなく、狙ってやっているという印象を受けました。もしかしたら、そこが糸井さんとの違いかもしれません。
これから、どこまで創造性と組織規模拡大の両立が続くのか、非常に興味が湧いてきました。
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