気づきとメタ思考

先日ある企業の30才前後の選抜者研修を実施しました。その中で、ある科目(ケースメソッド)に関する終了後アンケートに、こんなコメントがありました。

 

実務の現場で身に付けた暗黙知を、一日という時間を使って紐解き、それをケースを通してクラス全体で形式知化するセッションであった。それをセッション終盤の段階で「気づく」わけだが、その「気づく」ということが非常に役立つのではないだろうか。

 

そうなんです、その通り!企画する側の意図をよくぞここまで理解してくれたと、読んで嬉しくなりました。

 

「気づき」をもたらすプロセスが、前回のブログで書いた「User experience」そのものだと思います。それに対して、「機能」にあたるものは「正しい理論の伝授」です。あるレベル以上の受講者にとって、機能は当たり前であり、事前に課題図書でも読めばほぼ目標は達成されます。ではなぜ時間をかけて集合研修を行うのか?それは素晴らしい「User experience」があって初めて自分のものになるからなのです。私たちは、そんな素晴らしい「User experience」を提供することにこだわっています。

 

素晴らしい「User experience」を体感するには、体感する側にもあるスキルが必要です。このアンケートの回答者のように、意図的にそれができる人は、自分の経験や思いという内面を客観視でき、それと他者(講師や他受講者)から受け取った情報をひもつけ解釈することができる人です。さらには、そういった関係性の意味合いも理解している。つまり、高いレベルでメタ思考ができるのです。

 

ところで、たまたま今朝の日経に、俳優生瀬勝久のショートインタビューが載っていました。彼は、私が欠かさず観る数少ないTV番組のひとつ、

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「サラリーマンNEO」のメイン出演者です。ちょっと長いですが、引用します。

 

Q:コミカルな役柄が多いですが、シリアスな芝居とコメディーでは、演技に違いがありますか?

A:シリアスな芝居は、どういう場面かという内容さえ頭に入っていれば、自然な気持ちで演技ができます。相手のセリフを聞いて、それを消化して返答する。

 

Q:コメディーは自然にはできない?

A:笑いを生みだすには、観客が予測しているリズムをどうずらすかが大切なんです。「話はこういう順番で進んでいくだろう」という予測を裏切る。怒鳴る、と見せかけて、笑うとか、演技や会話のテンポをあえて遅らせるとか。それには「観客はこういうリズムで見ているな」と意識する必要があるんですよ。

 

Q:演技しながら、ずっと意識しているのですか?

A:常に頭の片隅にあります。自分の気持ち以外のことも考えなければならないから疲れます。

 

「常に頭の片隅にある」とは、普通に考えて行動している自分を見るもう一人の自分がいるということだと思います。どうです、コメディアンにもメタ思考が必要なのです。優れた俳優にも優秀なビジネスパーソンにも共通のスキルなのでしょう。凡庸なビジネスパーソンは、せいぜいシリアスな芝居しかできません。そうなっていませんか?

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このページは、福澤が2011年10月13日 14:44に書いたブログ記事です。

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