企業で人材育成をするわけ

長年、企業の人材育成のお手伝いを手掛けていると、人材育成の目的にも様々あることを実感します。企業が主体的に社員の人材育成を行う目的は、以下の三つに集約されるのではないでしょうか。

 

①「組織」を効果的にワークさせるため

いうまでもなく企業は組織で動きます。いくら個人の力が強くても、組織の力が強くなければ成果はでません。そのためには、社員のベクトルを会社のとアラインさせる必要があります。さらに、組織を適切の運営するマネジメントが必要です。それを中間で担うのがマネジャーです。ここでのマネジャーとは、必ずしも役職ではありません。マネジメントを担う人です。ではマネジメントとは何か?一人ではできないことを集団で実現することです。それがそもそも組織の目的なのですから、組織構成員は全員マネジャーといってもくらいです。そういう観点での教育を行うわけです。

 

②機能としての能力を向上させるため

組織とは機能の集まりということもできます。生産機能、販売機能、管理機能などなど。そして、その機能を担うのも社員ひとりひとりです。機能としての能力を高めるために、若手は先輩や上司といった機能面の師匠から学びます。いわゆるOJTです。しかし、現在問題があります。環境変化が激しく、必ずしも身近に師匠がいるとは限らないのです。あるいは、見かけは師匠だが実はもう使えないスキルしか持っていないのかもしれない。こういう場合は、現在必要なスキルや技術を持つ人(それは社外にしかいないかもしれません)から、日常業務とは別に学ばなければ修得できません。OJTではない、意図を持った仕掛けが不可欠になりつつあります。

 

③ビジネスパーソン(社会人)としての能力を向上させるため

自覚しているかどうかは別として、日本社会における企業は人格鍛錬の場所であったことは確かです。家庭や学校よりもはるかに仕事で人は鍛えられます。会社は一義的にはビジネスパーソンとしての鍛錬の場ですが、結果的に人間としての鍛錬の場にもなっていたことでしょう。人間的に鍛えられた社員のほうが機能要素としても、組織要素としても成果を出せることは間違いありません。ステークホルダーから助けられやすいからでもあります。だから、企業はこの面からの育成にも力を入れてきたのです。そのためにはOJTすなわち日常業務の中での教育が不可欠です。しかし、教育する側の余裕がなくなってきており、教育力の低下が問題となっています。

 

話は少しそれますが、非正規雇用の比率が高まるということは、極端に言えばこうした鍛錬の場を経ていない国民が増えるということです。教育が大切な15歳から24歳の男性労働者に占める非正規雇用の率は、1990年の20%から2011年は49.1%へと急増しています。この面での企業の教育力低下のみならず、そもそもカバレッジがこれだけ極端に下がっているのは、社会の大きな構造的問題でしょう。

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このページは、福澤が2011年8月 4日 14:30に書いたブログ記事です。

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