7/26(土)20:30から何と三時間にわたって、草間彌生の特集(世界が私を待っている「前衛芸術家 草間彌生の疾走」)がNHK-BSプレミアムで放送されました。

彼女の水玉模様の作品をご覧になった方は多いと思いますが、現在のアーチストとしての生の姿が描かれていました。もう40年近く精神病院から近所のアトリエに通う(その逆ではありません!)姿は、驚きを通り越して神々しさまで感じてしまうほどです。
もう84歳になるというのに、その欲望は衰えません。「もっとたくさんいい作品を描かないとピカソやミロを超えられないわ」と、世界巡回展のための百連作を描き続けます。彼女は本気で、ピカソを超えるつもりです。
そう語った直後に、アシスタントに尋ねます。「ねえ、カレーはまだ?」このギャップこそが草間彌生。
また、ロンドンの契約ギャラリー(超老舗)のオーナーにこう言います。
「なんかスタッフが、もう少し値段が上がんないかなと言っているだけど・・」
こう彼女に直接言われたオーナーは、了解せざるをえません。表面的にはスタッフの要望にしていますが、彼女以外の誰がそんなことを考えるでしょうか。
創作中も、驚くほどスタッフに意見を聞いていました。「ねえこれ、これでいいと思う?」「もっと、こうしたほうがいかしら」でも、スタッフはYESという以外にありません。自分自身で全て決めているにもかかわらず、それだと不安なので同意を求めているのでしょう。それはわずかに身につけた処世術なのかもしれません(岡本太郎も晩年は敏子に同意を求めていたそうです)。そんな草間は、ちょっとかわいらしくも見えました。
彼女は、作品を創造し続けなければ生きられないと語ります。もし、創造できなければ自殺していると。それは本心だと思います。生きることとは創造することであり、創造するからには一番でなければ満足できない、そしてその指標は「値段」である、この考え方は非常につらく厳しいものといえるでしょう。人間、そこまで自分を追い込めるものではありません。
84歳にもなってそこまで追い込まなくてもと凡人は考えるのでしょうが、彼女の場合84歳にもなっているのだから、残されたわずかな時間で極みを目指さなければ意味がない、そう思いつめエネルギー源としているようです。きっと、そういう生き方しかこれまでもこれから先もできないのだと思います。
彼女が世界で高く評価されているのは、そういった生き方やエネルギーが作品に込められているからなのでしょう。
草間の眼は岡本太郎の眼に似ています。外野の視線には全く関知せず、自分自身を生き抜く人に共通の眼なのかもしれません。草間彌生という存在自体が既に芸術作品になっています。
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