一月から始まった本講座、昨日で全6回が終了しました。5回目のセッションは3/10でした。最終回は翌週の予定でしたが震災のため延期し、約二カ月後の昨日になった次第です。
最終回は、受講者自身のリアルな課題を題材にして行いました。事前レポートとして、
1)自社の戦略に基づく経営課題
2)それを実現するための人材(組織)開発上の問題設定
3)(それがうまくいっていないとしたら)その原因の仮説
を3月に提出してもらっています。
当日の進め方は以下です。
全員のレポート中から議論が深まりそうな2名を選定しました。そして、それぞれまずレポート内容について語っていただきます。レポートは書いたとはいえ、なかなか皆の前で語るのは難しいものです。
次に、他の受講者から「問い」を発してもらいます。指摘やアドバイスではなく、「問い」です。その目的は、事前レポートで書いた上記3点について、あらためて考え直してもらうことです。一人で課題や原因を考えると、どうしても「思い込み」や「会社の常識」に囚われたものになってしまいます。そこで、会社のことも事業のことも知らない他受講者に、素朴な疑問を発してもらうのです。
それに発表者は答え、またそれへの問いが繰り返されるのですが、発表者の思考が目に見えて深まっていきます。真実がどんどんあぶり出されるイメージです。対話を繰り返しながら自組織の現在と未来を「物語る」ことで、癒されると同時に新しい思考と意思が芽生えるのです。(今回は「ナラティブ・アプローチ」を少し試してみました)
ある程度、問いが出尽くしたところで、あらためて発表者にHRD問題設定と原因仮説を言い直してもらいます。そうすると、事前レポートで書いたものと変わってきます。
こうして生まれた修正された問題設定と原因仮説に基づいて、全員で解決策を考えていきます。ここまできたら、他受講者もその組織についての雰囲気もだいぶ掴んできています。適切な問題設定と原因仮説があれば、ここは経験を積んでいる人材開発担当者ばかり、具体的なアイデアがどんどん生まれてきます。
ただし、これからが大変です。アイデアはたくさん出ても、どこからどう手をつけるべきかの方程式を解く必要があるからです。そのためには、その組織で起きていることを構造化してとらえ、相互作用やインパクトまで考慮し、優先順位づけせねばなりません。よくある失敗は、ある施策だけを「決め打ち」し、他に悪い影響を与えてしまうことです。ここまでくると、他受講者ではなかなか対応できません。しかし、その難しさを分かってもらえれば、講座としての目的は達成されます。
以上を、2社について行ったわけです。最後に発表者に感想を述べていただきましたが、自分の会社の組織を客観視することができ、二人とも有益なヒントをつかんだようです。自分のことや自組織のことを冷静に認識することは、情報がありすぎてかえって難しいものです。同じように人材開発に携わる、異業種の受講者同士での対話の場を設定することの意味を、あらためて認識しました。
私自身が、もっとも勉強になった全6回だったのかもしれません。積極的参加くださった受講者の皆さんと、日本CHO協会の須東さんに感謝いたします。
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