最近ビジネス界においても、デザインの重要性が急速に高まっているように感じます。アップルの飛躍の多くの部分は、デザインに負っていると思います。ただし、ここでいうデザインとは、目に見える装飾のことを言っているのではありません。もっと、広い概念です。
グラフィック・デザイナーの原研哉は、デザインをアートとの対比において以下のように述べています。
アートは個人が社会に向き合う個人的な意思表明であって、その発生の根源はとても個的なものだ。(中略)一方、デザインは基本的には個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある。問題の発端を社会の側に置いているのでその計画やプロセスは誰もがそれを理解し、デザイナーと同じ視点でそれを辿ることができる。そのプロセスの中に、人類が共感できる価値観や精神性が生み出され、それを共有する中に感動が発生するというのがデザインの魅力なのだ。
『デザインのデザイン』
また、クリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和はこう書いています。
デザインとは、問題を解決するために思考や情報を整理して、コンセプトやビジョンを導き出し、最適な形にして分かりやすくその価値を伝えていく行為です。「デザイン=表層的な形や美しさを作ること」と思われがちですが、デザインを"ソリューション"として捉えるべきだと思います。
『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』
さらに、スティーブ・ジョブズはこう語っています。
デザインというのは面白い言葉だ。外観のことだと思う人もいる。本当は、もっと深いもの、その製品がどのようにはたらくかということなんだ。いいデザインをしようと思えば、まず『真に理解する』必要がある。それが何なのか、心でつかむ必要があるんだ。(中略)何かを真に理解するためには、全身全霊で打ち込む必要がある・・・・そこまでのことをする人はめったにない。
『スティーブ・ジョブズ 偶像復活』
三人が言っていることは少しずつ違いますが、ひとつの共通のことを言っています。デザインとは、社会にある「問題」を解決することだということです。
そのために、社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、思考や情報を整理して、コンセプトやビジョンを導き出し、その解決策がどのようにはたらくかを真に理解した上で、最適な形にして分かりやすくその価値を伝えていくのです。
これは、まさに経営そのものと言えます。そう、経営者とは「良きデザイナー」であるべきなのです!ジョブズのように、本当に自ら「デザイン」をできる人も稀にいますが、多くはそこまでできません。では、どうするか?「人」をデザインするのです。つまり、人材を発掘し育成し適材適所するのです。日露戦争時の海軍大臣山本権兵衛が、まさにそうだったそうです。
このように考えると、不確実性が高まる変革期である今日、デザインが注目されるのも、至極当然なのでしょう。
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