「円熟するとは、自分の強みを知り、強みに反して苦労しなくてよくなることだ」という言葉を見つけました。『スティーブ・ジョブズ 偶像復活』(東洋経済新報社)のあとがきにあります。
ジェフリー・S・ヤング ウィリアム・L・サイモン 井口 耕二

これは深い言葉だと思います。若いときは、そもそも自分の強みが何かもよくわかっていません。その結果、強みを打ち消すような行動をあえて取ったりしてしまうものです。
確か塩野七生さんの言葉だったと思いますが、「組織を変革しようとすればするほど強みを打ち消すような行動を取ってしまう」という箴言がありました。円熟しない個人も組織も同じなのですね。
また、得意なことと好きなことも混同しがちです。それが自分にとって快いからでしょう。しかし、必ずしも得意なことと好きなことが一致するわけではないことが、だんだんわかってきます。それが分かってきたとき、どちらを選ぶのか。そもそも、その時点ではもう選択の余地は残されていないかもしれませんが。
さて、「強みに反して苦労しなくてよくなる」のは、
・正しく自分の強みを理解するから
・(好きなことより)強みを活かすことを優先するから
でしょうか。
それもありますが、さらに、
・自分の強みでない部分は、素直に得意な人にやってもらうことができるから
・他の人の強みを見つけて、尊重することができるから
といった点も大切だと思います。
そもそもなぜこのような境地に達することができるのでしょうか。やはり、自分の限界を思い知らされたからだという気がします。弱みと限界を知ることにより、強みもあぶり出され、かつその有り難味もわかってくる。ジョブズも、アップル追放劇やピクサーやネクストでそういう経験を積んだのかもしれません。
結局自然体ということです。でも、なかなかそれが難しい。なかなか円熟できない自分がいます。
ところで最初に挙げた本は非常に面白いです。ジョブズという人間のキャリア発達論、起業論、経営戦略論、リーダーシップ論など、様々な読み方が出来る深みのある好著です。
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