昨日の日経夕刊に、美術作家の束芋さん(1975年生まれ)のインタビュー記事がありました。彼女の作品は、一見おどろおどろしいですが、ハッとさせられる刺激に満ちているので好きです。見たくない真実を突き付けられる、そんな心の揺さぶりを与えてくれるのです。
このインタビューで、世代論に関してこう言っています。
団塊の世代は自分の専門に誇りを持ち、その道を究めようとする。個性あふれる一人ひとりは、いわば太巻きの具。各人が、米や干瓢、キュウリとして役割に徹し、ノリのような優秀なまとめ役に率いられれば、集団としてとてつもない力を見せる。
これに対して、断面の世代(注:ほぼ団塊ジュニア世代)は太巻きの切断面そのもの。全部が揃うが、いかにもぺらぺらな存在だ。しかし、ぺらぺらだからこそ、それらを集め直せば、面白い太巻きができるかもしれないし、そこから新たな世界が見えてくるかもしれない。
私自身はどちらの世代にも属していませんが、非常にシャープに現実を切っているなあと感じました。これは彼女自身が親子関係などの中で感じてきた違和感から来ているそうです。
アーティストの素晴らしいところは、実は誰もが感じているけど実態がよく分らないもの(たとえば違和感)を、言語ではなく目に見える作品で表現し、伝えることができることです。それに、私たち一般人は、ドキッとさせられ、考えさせられるのです。
たまたま昨日書いたブログの「ゼネラリスト」も太巻きの海苔のことかもしれません。バブル前は、束芋さんのいう具を巻くことの長けたノリが求められていた。しかし、それ自身では味がないノリばかりになると、美味しい太巻きは作れない。そこで、具(スペシャリスト)の重要性が強調された。しかし、それも限界が見えてきた。そして、現在は、太巻きの様々なぺらぺらな断面を合わせて巻き合わせて、以前とは異なる新しい太巻きを作り上げることが求められるようになってきた。
ちょっと、こじ付けっぽいですが、そんな空想も膨らみます。だから、現代美術は面白い。
今、大阪の国立国際美術館で 「束芋 断面の世代展」が開かれているそうです。行ってみたいですね。
コメントする