戦略的対話

今月の日経「私の履歴書」は、オービック創業者の野田順弘氏です。創業者の立ち上げ期の話は、やはり深い説得力を持ちます。

 

創業間もない頃、若い社員の勘違いで、三菱電機のオフコンを頼まれるまま20台発注してしまった会社は大変な危機に見舞われます。その20台を売り切らなければ倒産どころか、役員全員自己破産。当時のオフコンは超高級品で、そう簡単に売れない代物でした。

 

そこから先の粘りと集中力、団結力がすごい!営業部隊は毎朝7時半に出社して、進捗と情報を共有、ブレストを行う。すると、戦略と戦術の中身が見えてきたそうです。そして、本当に期限内に20台を売り切った。

 

収穫は別のところにあった。不可能と思えた「20台完売」を達成するために考え出した戦術が、今日のオービックが得意とするソリューションビジネスの原形になったことだ。

 溺れる者がむやみに体を動かしているうちに、誰も知らない泳法を身につけたようなものだ。

 

 

この話は非常に面白いです。同社の中核的戦略である「ソリューションビジネス」が、天才や戦略家のひらめきや分析で生まれたのではなく、もがき苦しむうちに、あたかも自然に生まれてきたことです。強いプレッシャー受けて、何とかしなければならならないとの覚悟が生みだしたとも言えるでしょう。私は、これが本当の戦略創造だと思います。かっこいいものではないのです。

 

そして、それを可能にしたのが対話です。毎朝の営業会議では、本気の意見のやり取りがあったことでしょう。そして、即実行した。営業マンたちの経験は浅く、知識もそれほどなかったことと思います。でも、全員が20台売り切りという目標達成に向けて本気だったのです。それが、戦略を創造し、また強い組織をも生み出したと言えるでしょう。

 

 

組織とは構造や指示命令系統ではなく、戦略的対話すなわちインタラクティブ性を基盤としたコミュニティーといえます。戦略的対話とは、認識、仮説構築、行動からなり組織進化を促す学習プロセスです。そして、戦略とは天才がひらめくものではなく、組織の進化を促す一貫性のある行動パターンのことなのです。

 

このことを、野田氏の話は如実に語ってくれます。では、どうすれば戦略的対話が実現できるのか?これが最大の問題です。戦略的対話が生まれるには、そうなるべき「場」ができていることでしょう。では、その「場」とは?

それを考え続けていかなければなりません。

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このページは、福澤が2010年6月21日 11:44に書いたブログ記事です。

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