世の中的には、本日から新年度です。今日入社した新入社員は1987年生まれが大半です。彼らは、バブル崩壊後の「失われたXX年」に人生を送ってきた人たちです。それまでの世代とは、大きく価値観が異なるのは必然なのでしょう。
ところで、昨年9月発売された三浦展著「シンプル族の反乱」を今ごろ読みました。漠然と感じてきたことを、データも使いながら示されると、やはり納得感がありました。
百貨店の大敗もユニクロや無印良品の好調も、単なる不景気のためでなく構造的なものです。本書では、そこまで言及していませんが、戦後一貫して続いてきたアメリカ絶対主義から、日本的価値観への回帰が起きていることが原因だと思います。「消費することが嬉しい」から「消費することが恥ずかしい」への一大パラダイムシフトが現在起きているのです。その変化は、バブル崩壊以降徐々に起きていますが、ここにきて大きな潮目が変わってきました。そのきっかけは、2008年のリーマンショックだったのは間違いないでしょう。
しかし、考えてみればアメリカがリードしてきた大量消費社会は、高度成長以降のわずか40年ちょっとのものです。その時代の空気をたっぷり吸った世代が、日本社会の中核だったわけですが、当然年を経るにしたがって主役は交代しつつあります。(ただし、政治の世界では、高齢者ほど投票率が高いため、社会の変化よりずっと遅れるでしょう)
さて、これからの日本社会の理想は、(極端な言い方ですが)江戸時代に戻ることなのかもしれません。成長より成熟を志向するということです。「もったいない」に代表されるように、自然と協調し、ホンモノを長く使うことを大切にし、身の丈にあった生活をおくる。人とつながることに価値をおき、(物質ではなく)内面の豊かさを求める、そんなくらしでしょうか。
資本主義が人間の物質的欲望をエンジンとして発展してきたのに対して、その欲望を否定し、「足ることを知る」ことに価値を置くわけですから、これまでの資本主義のロジックが通用しないのは明らかです。
そうなると、そういった国内市場をベースにした日本企業は立ち行かなくなるのではという懸念があるでしょう。しかし、そうでしょうか。私は楽観的です。
現在日本で起きているパラダイム転換は、地球温暖化対策の流れも受けて、世界的なトレンドになりつつあると考えます。そのトレンドを半歩先に日本は経験しているわけです。(公害問題と同じですね)ましてや、そのトレンドとは、かつての日本の得意技です。このようなある意味な特殊ですが肥沃な国内市場で鍛えられた日本企業は、グローバルでも成功する可能性を秘めています。無印良品やユニクロが、海外でも評価されつつあるのは、その萌芽だと思います。
あとは、日本企業がいかにパラダイム転換を認識し、それに対応した戦略を大胆に採ることができるか、その能力にかかっているのです。
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