壁と膜

企業組織には、内部のアイデンティティを保つための見えない壁があります。壁が境界となり、ウチとソトを隔てて求心力を保つわけです。「ウチの部では・・・」と言いますね。

 

しかし、本当は壁ではよくないでしょう。壁ではなく膜であるべきです。壁は遮断することが目的ですが、膜は透過するものと遮断するものを選別する機能もあります。フィルタリング機能です。

 

組織は、外部環境の中に存在するのですから、否応なくその影響を受けます。それに対して、壁で囲うのか膜で包むのかで大きな違いが出てくることでしょう。

 

この不況下、顧客は費用対効果の高さを求めてくるようになってきているはずです。これまでのように、他社が買っているからとか、以前から使っているからという理由はなくなりました。顧客とは、こちらが思う以上に冷たいものです。

 

そういった変化に対して、組織の中は従来型のやり方を維持するのか、それともその変化を取り入れるのか。具体的には、例えばこれまでの年功型報酬を維持するのか、成果型報酬に切り替えるのか。

 

不況がサイクリカルなもので、いずれ景気が戻ると予測するのなら、ここは壁を作りじっと耐えるのもありだと思います。しかし、構造的な変化だと予測するのなら、その変化を取り込まざるをえません。膜を透過させて内部に持ち込むのです

 

しかし、単に入れ込むだけでは、膜の中は混乱することでしょう。かつての横並びの成果主義採用の失敗がいい例です。取り入れた後、組織内部で新たな均衡を図ることが必要です。組織が「変わること」とは、成果主義に切り替えることではなく、成果主義が機能するよう組織全体が新たな均衡点を見つけることなのです。つまりパーツの取り換えではなく、パッケージで変えるのです。

 

そのための柔軟性を、人間の細胞組織は持っています。何を透過させ何を遮断するかの判断と実行、そして透過後直ちに均衡させる適応の速さ、こういう賢さやしなやかさを企業組織が持つために、できることは何でしょうか。常に外界に素肌をさらすことと、組織の中の透明性を高く維持すること、そして適切な代謝を促すことでしょうか。

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このページは、福澤が2010年3月26日 12:08に書いたブログ記事です。

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