ユニ・チャームの高原会長の「私の履歴書」は本当に面白いです。今日は、生理用品から紙おむつへの多角化の経緯が書いてありました。
生理用品でナンバーワン企業になったとたん、減収となった。花王の参入もあったが、最大の原因は慢心、気の緩みだと考えた高原さん。社内風土改善が必要と痛感し、なんと三年前日本市場に参入したP&Gがいきなりシェア90%を獲得した紙おむつ市場への参入をもくろんだのです。
とても合理的な戦略とは思えません。本業は花王に攻めまくられ大変な時期に、超巨大企業がどっしり構える新市場に参入しようなどと、およそ合理的な人は考えつかないでしょう。
案の定、社内も社外も大反対。しかし、経営会議で「反対するヤツは出てけ!」と怒鳴り、参入を決定してしまったのです。
なぜ、高原さんはそうまで紙おむつへの参入にこだわったのでしょうか。成功の確信があったのでしょうか。ここに、経営戦略のもう一つの形が見えます。SWOT分析などに基づく合理的戦略策定ではなく、組織が学習し進化することを最優先にした戦略策定といえると思います。
サントリーのビール事業の長年の赤字は、健全な危機感を組織に維持するための健全な赤字だとの論調はありますね。しかし、それはウィスキー事業というキャッシュカウあってのものです。高原さんは、本業が危ないからこそ、大変なリスクを抱えようとしたのですから、サントリーともぜんぜん違います。
そう考えると、ユニ・チャームの競争力の源泉は、組織の学習能力だと感じさせられます。いかに、組織内に緊張感を維持し常に進化、学習を続けさせることができるか、そこが他社に真似できない本質的な強みに違いありません。
連載にも出てきましたが、高原さんの「ノート魔」ぶりは有名です。(幹部研修をオブザーブされたときも、最前列に座って熱心にノートを取り、真っ先に質問していました。)このような姿勢が、全社に浸透しているのです。本当に強い企業です。
サラリーマン社長は、合理的戦略を選ばざるを得ないような風潮にあります。ユニ・チャームをはじめとしたオーナー系企業の多くが強いのは、非合理的戦略を取ることができるところにあるのかもしれません。
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