トップ選定プロセスと訓練

オバマ大統領就任から一年以上経過し、ハネムーン時期は終わったようです。あの長い選挙戦からの熱狂もさめてきつつあります。ただ、アメリカという国があれだけの時間とエネルギーをかけて大統領を選ぶということには、大きな意味があるのだと思います。

オバマvs.jpg 

アメリカ大統領には、体力・気力、そしてあらゆるセグメントの人々を説得できる言葉の力が必要です。それも、付焼刃ではなく真の力です。それを証明するには、相応の時間が必要なのです。あの長い選挙キャンペーン期間は、そのテストなのであり、また訓練の場なのでしょう。

 

記憶に新しいところでは、GEのジャックウェルチCEOが後継者を選定するプロセスが、大統領選挙に似ていましたね。

 

翻って日本の社長就任プロセス。ほとんどが、前任者の指名でしょう。(近年指名委員会というのもありますが)それは、日本企業の構造や文化に合っていたのでしょう。一種の家督相続や部族長の選定プロセスに似ています。

 

トップに期待されるのは、組織の継承であり調整能力、そしてうまく神輿に担がれることでした。社長に選ばれるような人は、長い会社人生の中でそういう能力を磨き、生き残ってきたのです。期待能力は違いますが、長い選考プロセスを経てきたという意味では、アメリカ大統領と似ているとも言えなくもありません。

 

しかし、問題は日本企業のトップに求められる役割や能力が、バブル崩壊以降、特に08年のリーマンショック急速に変化していることです。経営環境変化に伴い、トップのあり方も変わってこざるを得ないでしょう。

 

 

昇格者研修というものがあります。企業内で階層を上がると、必要とされる能力や意識が大きく変わるため、昇格前後に短期間でそれらを修得させることが目的です。

 

会社組織の中で、もっとも昇格時に「世界」が変わる階層はどこでしょうか?平社員から管理職に上がるときでしょうか。いえ、違います。社長に就任する時です。特に最近、トヨタの社長会見や証言を見ていて、つくづくそう感じます。

 

トヨタはともかく、上場企業で社長就任前にどれだけの専門トレーニングが施されているのでしょうか。「就任一期目では、何もできなかった。二期、三期やって、やっと自分のやりたいことができるようになる」という社長のコメントを多く耳にしませか。そんな悠長なことで、今どき大丈夫なんでしょうか。アメリカ大統領ではありませんが、就任100日で必要な方向性を示し、基盤を固めるくらいでなければ、グローバル競争に生き残っていけないでしょう。

 

もっともトレーニングが必要なのは、社長候補(内定)者なのではないでしょうか。

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このページは、福澤が2010年3月 1日 10:58に書いたブログ記事です。

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