企業の新入社員研修については、ほとんど関わったことがありませんが、近年盛んだなという印象は持っていました。先日、新入社員研修の講師を担当されている方のお話しを伺う機会があり、勉強になりました。
担当する研修では、論理思考からライティング、コミュニケーション、業務のシミュレーションまで、その内容は、驚くほど豊富。講師を担当する前に、模擬受講したのだが、私でも答えられないような難しさだった。クライアント企業の注文によっては、厳し目の指導もすることもあり、新人がその場で泣いてしまうこともあるよう。
研修を受けて配属された現場の先輩や上司は、新人の博学さ?と理屈っぽさで、面食らうことも多いらしい。そりゃ、そうだ。現場の経験が一切ないのに、理屈ばかり頭に詰め込んでも、すぐに役立つはずがない。現場の上司は大変だろうな。
その方は、講師を務めながらも、その効果には疑問を感じているようでした。
10年前のいわゆる企業研修フェアと近年のそれとの最大の違いは、新人や若手向けの研修プログラムの多さだと思います。特に、2004年頃からのミニバブルの大量採用が影響しているのではと思います。
新人獲得競争が復活し、学生に魅力ある企業だと思ってもらうには、豊富な新人・若手向け研修もアピーリングだったのかもしれません。また、大量に加わる新人を、現場では教育しきれず、外部研修会社に依存することも増えたのでしょう。OJTは、死語と課しつつありましたし。
その話を聞いて思い出したのが、私が新卒時に受けた新人研修と、唯一手がけた新人研修のあるプログラムです。
私は銀行に入行するとすぐに、2週間の新人研修に送りこまれました。町田郊外の研修所での缶詰合宿です。そこで、教育研修室指導のもとで、札勘(お札を数える)、加算機(大きめの電卓)、そろばん!の基礎技術を徹底的に訓練させられました。他にも財務分析などメニューはいろいろありましたが、よく覚えていません。同期は269名。40人くらいのクラスに分けられ、研修は進みます。クラス内のグループ対抗や、クラス対抗で、競わせることが基本だったと思います。2週間の研修で何を得たかといえば、先の基礎技術と同期の絆だったと思います。今思えば、銀行の意図も、そこにあったのだと思います。銀行でこれから長年いい仕事をしていく上では、同期の絆は、何よりも大事な財産ですから。そういう意味では、新人研修でしかできないことを、してくれたのだと感謝しています。(途中で退職したとはいえ)
それから、もう15年くらい前になりますが、一度だけクライアント企業に新人研修の1プログラムを開発し、提供しました。某大手通信企業の新人、約250名が対象です。依頼内容は、大学・大学院から社会人になりたての新入社員に、「社会と企業と個人の関係を理解させてほしい」という、今思い出しても難しいテーマでした。ようは、企業で働くうえでの社会人としての自覚を持たせてほしいということです。ここで、プログラム内容は書きませんが、非常に苦労しました。でも、最終的には受講者にもクライアントにも満足頂き、大きな達成感を味わったことを覚えています。
今年は、採用人数も大幅に絞られ、新入社員研修の形も変わっていくことでしょう。決して、「実施することに意味がある」というようなものには、していただきたくはありません。
コメントする