脱サラならぬ脱刑事作家がいることを、今朝の朝日新聞で初めて知りました。飯田裕久さんは、25年の刑事勤めを07年に辞め、現在刑事もの小説を書いているそうです。
警視庁捜査一課刑事
飯田 裕久
飯田さんによると刑事や警察官の質も、バブル前後で大きく変わったそうです。
まず、バブル期までは人材獲得難の時代で、高校の後輩を説得して採用されたら表彰までされたそうです。バブル期には、それまで8人部屋だった警察学校の寮が、採用を増やすため個室にしたそうです。
飯田さんと私は同じ年です。私も銀行の独身寮にいましたが、相部屋個室というドアが一つで、開けると正面に壁があり、その左右に小部屋があるという環境にいました。そして、バブル華やかな頃、個室に変わりました。
飯田さんも書いていますが、プライバシーゼロの世界では、人にもまれる中で、否応なく人の気持ちを察するようになります。思い返してみても、相部屋でよかったと思います。
バブル崩壊とともに一転、警察官は人気職種となります。いうまでもなく、安定志向です。バブル崩壊後の警察官は、点数稼ぎの傾向が強く、自転車への職務質問が急に増えた。自転車泥棒を見つければ、「職務質問による検挙」という点数が簡単に稼げるから。本来自転車への職質は、自転車泥棒を捕まえるためではなく、質問への受け答えや挙動の不自然さから、より大きな犯罪の糸口をつかむことが目的です。人間を見る眼が要求されます。それが、人間は見ないで、自転車を見るようになってしまった。
飯田さんの時代は、先輩に毎晩のように飲みに連れられ、説教や怒られながら多くのことを学んだそうです。ところが、バブル崩壊後「先輩が後輩を酒席に誘うこと禁止」のお達しが出た。それからは、後輩を酒に誘っても平気で断られるようになったとのこと。
一方で、OBを呼んでわざわざ経験談を若手に聞かせることも内部で実施しているそうです。でも若手は、「年寄りが昔の手柄話をしている」としか聞かない。
そんな若手の得意技は、ITを駆使すること。昔は、ベテラン刑事が何日もかけて集めた情報が、一瞬で取りだせる。過去の犯罪情報がデータベース化されているのです。
昔の刑事ドラマや映画で、ベテラン刑事が所轄を超えた警察署に出向き、嫌がらせを受けながらも人間関係を深め、なんとか情報を分けてもらうという場面がよくありました。
今は、そんな必要はないのです。データベースの情報と、ベテラン刑事が、担当刑事から聞きだした情報と比べて、どちらが情報として有益か、いわずもがなでしょう。コンテンツは伝わっても、コンテクストは伝わらない。
結局、一番身近な先輩が、現場で手取り足取り教えていくしかないというのが、飯田さんの結論です。バブル前を知る今の40代が、鍵を握っているというのは、警察の世界も企業の世界も(もしかして任侠の世界も)同じなんですね。
それほど、バブルとその崩壊は、日本社会に大きな影響を及ぼしているのです。そして、再び・・・。
コメントする