社内研修とオープンセミナーの経済性比較

春です。新年度に入ったことですし、社会人教育について、経済性の面から少し考えてみましょう。

  

社会人教育といった場合は、大きくインハウスの社内研修とオープンセミナー(公開講座)に分かれます。

 

前者は、特定企業が独自に企画実施するものです。したがって、受講者も普通、業務の一環として参加します。もちろん会社にとっても必要経費です。オープンセミナーとは、社会人なら企業を問わず誰でも申し込み受講できる公開講座です。

 

では、まず社内研修から考えてみましょう。必要な経費は、もっともシンプルに考えれば外部講師への支払いのみです。かなり大胆ですが、以下を前提とします。

 ・外部講師を起用

    会場は社内会議室を使用

    受講者の交通費等は受講者の負担

    研修企画担当者の人件費や、受講者の機会費用は考慮せず

    企業は利益を出しており、税率は40

 

仮に、一人一日の研修で得られる研修効果を3万円とします。20人の受講者で計60万円です。損金になることを考慮すれば、企業としては、100万円までの支出が正当化されます。

 60万円/(140%)=100万円

 

つまり、外部講師などに100万円までなら支払うことが合理的なのです。(もちろん、外部講師を研修会社経由で依頼する場合は、研修会社への支払いとなります。)

 

一方、オープンセミナーのコストを考えてみましょう。

上記と同様の成果が期待できるプログラムだとすれば、受講料売上は、

 3万円X20人=60万円

 

これに、教室代とマーケティングコストがかかります。

    教室代 7時間で7万円(時間単価1万円として)

    マーケティング費用 6万円(標準売上の10%として)

    運営の人件費はなしとする

 ・オープン講座の受講者は、個人で費用負担する

 

 

あと、集客リスクを加味する必要があります。一クラスあたり適正人数が、20名だからといって、20名いつも集客できるわけではありません。また、人気講座だからといって、30名で実施することもできません。そこで、リスクを加味した上で、平均の集客数が、17名としましょう。

    集客リスク 3X3万円=9万円

 

そうすると、残りの金額はわずか38万円です

  60万円-(7万円+6万円+9万円)=38万円

 

全額講師料としてしまえば、オープンセミナー会社は存続できません。ここから、いくらかの利益を残さねばなりません。

 

このように見てくると、20人に対して60万円相当の同じサービスを提供する

としても、社内研修とオープンセミナーでは、そのコンテンツ(講師と教材)に充当できる金額が大きく異なることがわかります。(オープンセミナーはコンテンツが劣ると言っているわけではありません。誤解なきよう)

 

非常に極端な例ではありますが、同じ社会人教育といっても、その、エコノミクスは様々なのです。教育を提供する側も、受ける側も、こういったエコノミクスを考慮したうえで、判断していきましょう。

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このページは、福澤が2009年4月 6日 16:54に書いたブログ記事です。

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