「リアル」と想像の力

TVドラマ、映画、演劇、歌舞伎、文楽、狂言、能・・・

 

いずれも一応ストーリーがあって、演じ手が演じたものを客が観るという形式のエンタテイメントですが、何の順で並べたと思いますか?

 

そう、観客の想像力を必要としないと私が考える順です。「リアル」な順ということも言えるかもしれません。

 

昨日、加藤健一事務所の「川を越えて、森を抜けて」という芝居を観ました。演劇は、能よりは「リアル」ですが、TVや映画よりは作り手側の制約が大きいものです。詳細は省きますが、芝居の中のある部分で、私は感情移入ができませんでした。つまり、個人として「リアル」を感じなかったのです。それは、脚本がどうとか、役者がどうという問題ではありません。あくまで、私個人の内面と芝居の世界がつながらなかったのです。

 

そう考えると「リアル」とは、具体的とか目に見えやすいということではなく、自分の内面とどれだけつながっているかということだと思います。だとすると、TVドラマより能のほうがリアルであるということも、十分あります。いや、実際そうです。文楽の人形や能面は固まっているにも関わらず、多様に表情を変えます(そう見えます)。

 

想像に依存するということは、観客の内面と演じ手の世界のつながりが無限大に広がる可能性を秘めているということなのです。想像に依存しないTVドラマでは、リアルであるがゆえに、つながりの程度が限定されてしまうような気がします。

 

教育の分野でも同じではないでしょうか。学び手に「リアル」(具体的という意味での)なものを与えればいいわけではありません。想像力を刺激し、思考を活発にさせるきっかけを与えることで、学び手の内面を刺激し、徐々に独自の世界を形づくっていくのではないでしょうか。

加藤健一事務所.jpg

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このページは、福澤が2009年3月26日 12:56に書いたブログ記事です。

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