先週の金曜、Learning Bar@東大 に参加してきました。今回のテーマは、「コミュニケーション不全『職場の孤独を克服せよ!』」です。リクルートエージェントで「ちゑや」店主を務める中村繁さんが講演されました。
「ちゑや」とは、社内で人と人を結びつけることを目的とした公式組織です。2006年に中村さんの自発的活動として始めた企画を、会社が2008年から公式組織としたものです。中村さんは専任です。
リクルートは、かつて遊びと仕事が一体となったような企業で、活力に満ちていましたそうです。それが、企業規模の拡大とともに徐々に薄れつつあります。それに危機感を持った中村さんが、リクルートエージェントというリクルートグループにおける辺境で、かつての遺伝子を呼び覚まそうと奮闘しているように思えました。
リクルートに限らず、職場でのコミュニケーション不全は大きな問題となっています。今後さらに大きくなっていくことも予想されます。一方、情報管理リスクやプロジェクト型業務拡大など、コミュニケーション不全が企業に与えるリスクの大きさは急激に増段しています。そのような文脈で、社内運動会や旅行、社員寮の復活などが話題となっています。でも、古き良き日本企業の慣習に戻ればいいのでしょうか?中村さんの取り組みは、その問いに答えようとしています。
いわゆるコミュニケーションの良さと仕事の成果との間に、大きな相関はありそうですが、決して因果関係はない。それは、かつて銀行にいた私の実感です。近頃の論調は、コミュニケーションが良ければ仕事の成果もあがるとの、楽観的なものが目立ちます。コミュニケーションは重要ですが、それはあくまで手段です。
コミュニケーションと仕事の関係について、以下のようなマトリクスを考えてみましょう。縦軸に会社の関与度合いをとります。フォーマルとインフォーマルです。横軸には、直接的な目的をとります。コミュニケーション強化(親睦)と仕事成果向上(あえて言えば情報共有)です。
フォーマルで仕事成果向上のボックスは、管理職などよるチームマネジメントや営業ノウハウ共有会議などです。フォーマルなコミュニケーション強化は、かつての社内運動会や社員寮などです。インフォーマルなコミュニケーション強化のボックスは、社内サークル活動や同期会などでしょうか。そして、インフォーマルな仕事成果向上のボックスが、「ちゑや」の活動だと思います。インフォーマルに仕事成果向上のための活動を行うことは、ある意味自己矛盾です。悪く解釈すれば、会社による労働強化とも受け取られかねません。そこを、明るく楽しくやるのがリクルート流なのでしょう。中村さんも、そのあたりのジレンマを感じておられるようでした。
私は、そのようなインフォーマルな仕事成果創出活動は、今後重要になると考えています。強制ではなく、あくまで任意です。その代わり、そのような活動により組織の生産性が向上したとすれば、その配当が参加者個人になんらかの形でなされるような仕掛けが必要かもしれません。
「ちゑや」の取り組みは、これからの企業組織のあり方を考える上でも、とても興味深い事例だと思います。
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