ビジネスパーソンの知的レベルとビジネス書

近年、日本人の知的レベルの低下が著しいということは、多くのメディアで取り上げられています。私自身は、あまりそう感じたことはなかったのですが。

 

 

先日、企業研修用ビデオ(DVD)を制作・販売する会社の方と話す機会がありました。この業界に長くいると、顧客企業が望む教材のレベルから、ビジネスパーソンのレベルの低下がよくわかるそうです。

 

そういう教材を購入する企業の裾野が広がり、その結果、レベルを下げてほしいとの要望が増えることも考えられますが、どうもそうでもないようです。

 

まず、家庭で躾けるべき内容を、企業内教育で学ばせたい、躾けたいとの要望が増えたそうです。これは、教育全般のレベルの問題です。

 

また、例えば英語教育でも、これまでであればTOEIC600700点以上を目指すような教材が売れていたが、最近は350点くらいを対象としたニーズが増えているそうです。これも裾野が広がったからではなさそうで、受講者の出身大学などは、あまり変わっていないとのこと。

 

ビデオ教材は、ドラマ仕立ての映像を観させた上で、人事部員などが講師となって、受講者に考えさせ議論させ、その後解説の映像を観せるといった使い方を想定していそうです。ところが、最近は企業から、最初から解説も観させるようなつくりにしてほしいと要望されることが増えたそうです。講師役が、どうその場を仕切っていいかわからないので、単に見せるだけにしたいのではないか、と推測していました。一般社員のみならず、人事部員のレベルも落ちているのでしょうか。あるいは、そこまで手間をかけたくないのでしょうか。

 

 

書店で売れている本といえば、すぐ使えそうなビジネス知識を噛み砕いて丁寧に教えるような本か勉強法、収入を○○○倍増やす法!みたいな本ばかり。

 

ある程度普遍的な知識から、自分の仕事や生き方に役立ちそうな部分を見つけ出し、そんないくつかを組み合わせて内面化していく力が、総じて落ちているのかもしれません。だから、すぐ使える知識やノウハウをひたすら探し続ける。

 

でも、そんな自分にぴったり合った本などあるはずがありません。(だから出版業界は、そこの品揃えを増やそうとするのでしょう)情報が増えれば増えるほど、本当に自分に必要な情報が入手しづらくなる。だから、さらに情報を追い求める。悪循環です。

 

 

ビジネスパーソンの知的レベル低下と氾濫するビジネス書。双方強化しあいながら、我々日本人はどこに向かっているのでしょうか。

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このページは、福澤が2009年7月 1日 12:49に書いたブログ記事です。

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