人材・組織開発の現場から: 2009年9月アーカイブ

 

私は、企業や大学でレゴ・ブロックを使った人材・組織開発プログラム

(「レゴ・シリアス・プレー」)を、提供しています。レゴを使うことに

よって、言葉にできない想いを表現させることができるのです。

 

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このプログラムは、2003年にデンマーク、レゴ社の主任開発者だった、ロ

バー・ラスムセン氏がNASAのロケット開発・安全対策チームから依頼を受

けたことから注目されました。

 

対策チームの責任者は、ロケットの爆発事故を引き起こす遠因は、個々の

技術者間の対話に「何かが欠けている」ことにあるのでは、と仮説を立て

ました。世界中から招請された技術者ひとりひとりは優秀なのですが、彼

らの間に、自由で対等に議論できる場がなかったのです。技術者でも発言

力の強いもの、地位の高いものが議論の場を独占してしまいます。

 

 

ロバートは、彼ら技術者の『孤独な想い』をレゴ・ブロックで可視化さ

せ、個々に語らせます。その結果、彼らの想いは、『根っこ』では繋がっ

ていることを自ら気づかせたのです。彼等が、チームとして率直な対話を

交わし、共通の使命、『ロケットを安全に地球に帰還させる』に目覚めた

時、ロケットに魂が入ることになったのです。

 

 

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日本でのプログラムの参加者の多くも『言葉にはできない想い』や『改革

への腹案』をレゴ・ブロックで創った作品を通して語ります。

 

例えば、ある企業の参加者達に、「将来こうなりたいという企業の姿と

今の自分」をレゴ・ブロックで創って貰いました。次に、「理想の企業を

創るのに、自分が超えなくてならない壁」を創り、他のメンバー(*4-5

のチームに分けて行います)にそれらの作品について語ってもらいまし

た。

 

他のメンバーは作品を観ながら、「このブロックの赤い部分は・・・この

腕のようなモノが上を向いているのは・・・壁は大きいのですか・・・」

というように、本人に直接ではなく、作品に対して質問をして行きます。

この参加者は、自分でハッと気づきました。顔色が紅潮するのが分かりま

す。「そうだ、この壁を『自分で』超えなくてはいけないのだ(上司や同

僚ではなくて!)」。

 

最後にこの参加者の作品と他のメンバーの作品として統合したところ、

「自分が超えなくてはいけない壁」という個々の作品が、中央に置かれた

のです。「どうして真ん中に『壁』を置くのですか?」という質問をした

ところ、メンバー全員から「『真っ先に』それらに、自分たちが手をつけ

なくてはならないのです。」と、返ってきました。

 

 

自分で気づいたら、行動するのは彼らの責任です。組織や企業には、その

行動をサポートする、そのようなフォローを期待しています。

 

 

レゴ・ブロックの作品を観ていると、ワークショップの参加者は、実に雄

弁でかつ創造性豊かです。経営者には、彼らの言葉を聴き、活かして欲し

いと思います。

 

 

ヒトや組織が変わる瞬間、皆笑顔に輝きます。この笑顔に会えることは、

私達自身も彼らと一緒にやって、良かったと思う瞬間でもあります。

 

 

 

 蓮沼 孝(はすぬま・たかし)

株式viewimage.jpg会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ

代表取締役社長 /レゴ・シリアス・プレー公認ファシリテーター

 

早稲田大学理工学部卒、ペンシルバニア大学ウォートン校修

了(MBA)。三菱商事、ラッセルレイノルズ・アソシエイ

ツ、株式会社グロービス、Techemグループを経て、株式会社

ポトマックアソシエイツ・取締役(現職)。05年から09年ま

で、NPO法人九州アジア経営塾プログラム・ディレクターを

める。