私は、企業や大学でレゴ・ブロックを使った人材・組織開発プログラム
(「レゴ・シリアス・プレー」)を、提供しています。レゴを使うことに
よって、言葉にできない想いを表現させることができるのです。
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このプログラムは、2003年にデンマーク、レゴ社の主任開発者だった、ロ
バー・ラスムセン氏がNASAのロケット開発・安全対策チームから依頼を受
けたことから注目されました。
対策チームの責任者は、ロケットの爆発事故を引き起こす遠因は、個々の
技術者間の対話に「何かが欠けている」ことにあるのでは、と仮説を立て
ました。世界中から招請された技術者ひとりひとりは優秀なのですが、彼
らの間に、自由で対等に議論できる場がなかったのです。技術者でも発言
力の強いもの、地位の高いものが議論の場を独占してしまいます。
ロバートは、彼ら技術者の『孤独な想い』をレゴ・ブロックで可視化さ
せ、個々に語らせます。その結果、彼らの想いは、『根っこ』では繋がっ
ていることを自ら気づかせたのです。彼等が、チームとして率直な対話を
交わし、共通の使命、『ロケットを安全に地球に帰還させる』に目覚めた
時、ロケットに魂が入ることになったのです。
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日本でのプログラムの参加者の多くも『言葉にはできない想い』や『改革
への腹案』をレゴ・ブロックで創った作品を通して語ります。
例えば、ある企業の参加者達に、「将来こうなりたいという企業の姿と
今の自分」をレゴ・ブロックで創って貰いました。次に、「理想の企業を
創るのに、自分が超えなくてならない壁」を創り、他のメンバー(*4-5名
のチームに分けて行います)にそれらの作品について語ってもらいまし
た。
他のメンバーは作品を観ながら、「このブロックの赤い部分は・・・この
腕のようなモノが上を向いているのは・・・壁は大きいのですか・・・」
というように、本人に直接ではなく、作品に対して質問をして行きます。
この参加者は、自分でハッと気づきました。顔色が紅潮するのが分かりま
す。「そうだ、この壁を『自分で』超えなくてはいけないのだ(上司や同
僚ではなくて!)」。
最後にこの参加者の作品と他のメンバーの作品として統合したところ、
「自分が超えなくてはいけない壁」という個々の作品が、中央に置かれた
のです。「どうして真ん中に『壁』を置くのですか?」という質問をした
ところ、メンバー全員から「『真っ先に』それらに、自分たちが手をつけ
なくてはならないのです。」と、返ってきました。
自分で気づいたら、行動するのは彼らの責任です。組織や企業には、その
行動をサポートする、そのようなフォローを期待しています。
レゴ・ブロックの作品を観ていると、ワークショップの参加者は、実に雄
弁でかつ創造性豊かです。経営者には、彼らの言葉を聴き、活かして欲し
いと思います。
ヒトや組織が変わる瞬間、皆笑顔に輝きます。この笑顔に会えることは、
私達自身も彼らと一緒にやって、良かったと思う瞬間でもあります。
蓮沼 孝(はすぬま・たかし)
株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ
代表取締役社長 /レゴ・シリアス・プレー公認ファシリテーター