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「わたしの名はVI・ウォーショースキー。シカゴに事務所をかまえるプロの私立探偵だ。」と名乗るのは、女流作家サラ・パレツキーが生んだ女性探偵。

 

サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))
山本 やよい
4150753512

 

舞台がシカゴの道路や建物、季節気候などいろんな情報がてんこ盛りにでてくる。

 

たとえばダウンタウンの道路の描写では、「ランドルフ通りでレイク・ショア・ドライヴを降りると、高架鉄道の鉄のアーチの下を通ってウォバッシュ・アヴェニューを南下した。」とか、「ウェスタン・アヴェニューからアーミティジ・アヴェニューに曲がり、ミルウォーキー・アヴェニューに向かった。このあたりは、コンクリートの土台に支えられた高速道路が頭上に威嚇するようにそびえている。」などなど。このような場面ではダウンタウンの地図を横において道程をなぞりたい衝動に駆られはするけれども、展開が面白いので読み進んでしまう。 

 

活動はたまには郊外に及び、「ノースウェスト有料道路に入って、ルート58に出て、南へ向かい、シャウムバーグ(私たちはシャンバーグと発音していたが)をめざした。」「オヘアを過ぎてさらに先へ(中略)アルゴンキン・ロード付近で(中略)インターステート290の出口で曲がった。ノースウェスト・ハイウェイに入ってバリントン・ヒルズに向かった。」出向していた現地法人の事務所がオヘア空港のまだ西の郊外にあって、住居もその辺りだったので身近に感じる。

 

ハンコック・ビル、マコーミック・プレース、ミシガン湖畔のジョギングや水浴の穴場やシカゴカブスなど道路以外の情報も、一人称のヴィクの口から時には感情を込めて、時にはグチっぽく語られる。ヴィクとはウォーショースキーのファーストネームで、親しい人にはそう呼ばせている。Vはヴィクトリアなのだけれど、女らしい愛称ヴィッキーを嫌って。

 

もちろんストーリーはすこぶる面白く、時には所持している万能鍵を使ってオフィスへ侵入したり、スミス&ウェッスン9ミリ口径のセミ・オートマティックをぶっ放したり、ハードボイルドな手に汗にぎる場面が随所に出てくる。

 

サラ・パレツキーはヴィク・シリーズを1982年(翻訳は1985年)の第1作「サマータイム・ブルース(INDEMNITY ONLY)」から15作品以上執筆しており、ハヤカワ・ミステリー文庫から少なくとも10冊以上の翻訳本がでている。

 

シカゴへ赴任が決まった人はブックオフや古本市場へ出かけて手当たり次第に購入し、船便の荷物に入れることをお勧めする。長い冬の読書にも打って付けだし、生活に大変参考になること請け合いだ。

 

私は駐在から帰任して10年を超えるが、たまに書棚から取り出して半身浴のお供に読んでいる。

 

 

 

Ac-akechi-a.jpg致 親吾(あけち・しんご)

 神戸大学工学部計測工学科卒。立石電機㈱(現オムロン)入社。経営戦略室担当部長、名古屋支店支店長、米州現地法人責任者、人材マネジメント室長を経て2004年6月取締役副社長就任。20086月、取締役を退任し特別顧問に就任。20096月特別顧問を退任。

 

 

 

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