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「人間的魅力の研究(伊藤肇著)」
   ~株式会社オントラック 代表 石野雄一 ~

 

人間的魅力の研究 (日経ビジネス人文庫)
4532190258

 

 「人間的魅力の研究(伊藤肇著)」という本は、私が学生時代から、折りに触
れて読み返している本である。

この本の魅力は、それこそ古今東西のさまざまな人物のエピソードを紹介し、
その人物がホンモノかニセモノか、一刀両断のもとに評していくというその歯
切れのよさにある。

そもそも人間的魅力とは何であろうか。著者の伊藤肇は、「運命は偶然よりも
必然である『運命は性格のなかにある』という言葉は等閑に生まれたものでは
ない」という芥川龍之介の言葉や「何事かを成しとげるのは、その人の才能で
はなくて性格である」という司馬遼太郎の指摘をとりあげ、「性格こそ魅力
だ」と結論づけている。

本書では「魅力」を分析した学者である明末の碩学、呂新吾の次の三つの「魅
力」を土台にして、議論を展開している。深沈厚重ナルハ是レ第一等ノ美質。
磊落豪雄ナルハ是レ第ニ等ノ美質。聡明才弁ナルハ是レ第三等ノ美質。

はたして、呂新吾が第一等ノ美質としている「深沈厚重」とはどのような魅力
なのであろうか。伊藤肇が「深沈厚重」の人として挙げているのは西郷隆盛で
ある。その中の一文をご紹介しよう。

『坂本竜馬が西郷にはじめて接触した時の感想は「あれは大きな鐘のような男
だ。小さく撞けば小さく鳴り、大きく撞けば大きく鳴る」という評を下した。
西郷好きの勝海舟は「評する人も人。評せらるる人も人」と感嘆したが、当時
人物批評のたしかさにおいて右に出る者がいない、といわれた海舟の一言だけ
にきかせるものがある。』

さらに、「磊落豪雄」「聡明才弁」の代表となる人物を挙げ、これらの人物の
魅力をさまざまエピソードを通して、浮き彫りにしていくのである。

私自身の人物評価の尺度に、この本は多大な影響を与えているといえる。伊藤
肇はこうも述べている。

『最初から「深沈厚重」の魅力をもった人間がいるわけではないということで
ある。やはり、「聡明才弁」「磊落豪雄」の順序を踏んで、はじめて「深沈厚
重」に到達するのである。「一日、かの人に接すれば、一日の愛生ず。三日、
かの人に接すれば、三日の愛生ず」といわれた西郷隆盛といえども例外ではな
いし、「世界四大聖人」の一人に数えられる孔子もまたしかりである』

この伊藤肇の文章におおいに助けられている私ではあるが、この本を読み返す
たびに自分の不甲斐なさを痛切に感じ、おおいに刺激を受けているのもまた事
実なのである。

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Ac-ishino-a.jpg野 雄一 (いしの ゆういち) 
株式会社 オントラック  代表取締役 
上智大学理工学部化学科卒業、インディアナ大学ケリースクール卒業(MBA課程)   三菱東京UFJ銀行(旧三菱銀行)、日産自動車財務部、ブーズ・アンド・カンパニーを経て独立。

著書として、「道具としてのファイナンス」(日本実業出版社)、「ざっくり分かるファイナンス」(光文社新書)がある。
エクセルを活用してわかりやすくファイナンスを修得させる研修が好評。
 

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