人の想像力は本当に大したことがないと思います。塩野七生は、「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えているわけではない。多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない」というカエサルの言葉を引用しましたが、私はそれに「人は経験しなければ事実であってもそれを理解できない。人の想像力には限界がある」ということを加えたいと思っています。
人と人とのコミュニケーションにおいて、何でこんなことが伝わらないのだろうかと思った経験を誰でも持っているかと思います。私自身もいつもそのモヤモヤしたものにフラストレーションを溜めていましたが、それは当然のことだったと受け止めなければならないのかもしれません。
この経験は私にとって、まさに目から鱗が落ちる思いでした。常に対象とする人たちが自分と同じコンテクストで生きているわけではないし、そう考えること自体が傲慢なのではないかと気づいたのです。つまり、相手に想像力を期待してコミュニケーションを取ってはいけないし、ある意味それは傲慢だ、ということを。相手はこれまでどのような経験を積んできているのか、どのようなことが常識になっているのか、また大事だと思っていることは何のかを考えないで相手とコミュニケーションをとることはできません。このような経験からの気づきが、今のコンサルタントとしてのバックボーンになっており、またコミュニケーションについてのスタンスとなっています。
今の世の中、どんな素晴らしい考え方も相手に伝えられなければ価値のあるものにはならないものです。コミュニケーションの大事さ、そしてその難しさを痛感した私としては、少しでも多くの方々にそれを理解してもらえたらと思っています。

慶応義塾大学経済学部
慶應義塾大学大学院経営管理研究科終了(MBA)
同在学中にペンシルバニア大学経営大学院ウォートンスクールに交換留学
NEC、PRTMマネジメント・コンサルタンツ日本代表を経てモニターグループに参画
早稲田大学客員助教授(2005年~2007年)
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