【自著を語る】大津広一氏 「戦略思考で読み解く経営分析入門」

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戦略思考で読み解く経営分析入門―12の重要指標をケーススタディで理解する
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2009911日に発売した『戦略思考で読み解く経営分析入門』は、2005年、2007年に出版した書籍に続いて、私にとっての3冊目となりました。


私の場合、夏以降はコンサルティングや研修講師が繁忙期に入るため、年末までは執筆のためのまとまった時間はとれません。よって、3月決算の企業が5月までに決算発表を行って、データが揃った後の3か月程度が、執筆と校正の大切な追い込み時期となります。そのためにも年初から5月までにいかにベースが作れているかが大事です。今回の書籍も昨年末から、コツコツと書き続けておりました。これまで3冊の書籍ともに8月から9月に発売しているのも、実は偶然ではないのです。

 

 本著はタイトルの通り、戦略思考を念頭に置いて決算書を基に経営分析を行おうとするものです。4年前に同じダイヤモンド社から出版した『企業価値を創造する会計指標入門』は、3,780円という高単価ながらお陰さまでロングセラーとなり、今般その兄弟本に相当する書籍の出版に至った次第です。前著は経営目標として掲げる様々な会計指標という切り口の書籍であったのに対して、新著は経営分析に主眼を置いて、戦略と決算書数値の往復を意識して執筆したものです。

 

 会計の書籍を書く上では、読者が書籍を読んだ後に、いざ自分の会社や競合、顧客などを分析する際、すぐに活用できる汎用的な内容となることを意識しています。そのため、出来る限り企業ありきではなく、会計ありきのアプローチを踏んでいます。とは言ってもケース事例が無いとしっくりこないのも私を初め読者の心理なので、前半に数値の読み方を解説し、後半にケース事例を用いて実際の分析を行うという構成です。

 

例えば第1章では、売上高総利益率の分析手法を解説した上で、任天堂をケーススタディとして分析しています。任天堂の売上高総利益率は、40%台前半という意外と低い値(人によっては意外と高いと言う方もあるでしょう)、かつ四半期ベースで非常にブレが激しいのが特徴です。

なぜでしょう・・? 

そこには任天堂の経営戦略と、どんな関係性があるのでしょう・・?  

そもそも任天堂が経営ビジョンとして目指しているものは何でしょう・・? 

そして、それが売上高総利益率の意外と低い値とブレの激しい動きに映出されているとすれば・・?

 

 売上高総利益率を分析するための4つの分解のSTEPとして、①売上高と売上原価への分解、②製品構成への分解、③顧客構成への分解、④事業構成への分解 を紹介し、これに沿って、任天堂の同比率を分析しています。任天堂の経営ビジョンと、そのための価格や製造に関する戦略が見事にマッチした同比率の動きだと考えています。この4つのSTEPは、読者が自分の企業を分析する上でも、そのまま活用いただけるアプローチとなるはずです

 

 書籍については、「いぶし銀の演歌歌手」を目指しています。何度読んでも、何年たっても、色あせない良さがあるもの。果たして読者の方々の評価はどう出るでしょうか。

 

 

 

 

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1989年、慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業。米国ニューヨーク州ロチェスター大学経営学修士(MBA)。 株式会社富士銀行、バークレイズ・キャピタル証券、ベンチャーキャピタルを経て、2003年株式会社オオツ・インターナショナルを設立。現在は経営戦略(専門は金融、教育、ソフトウェア)や会計・財務に関わるコンサルティングに従事。早稲田大学大学院商学研究科ビジネススクール(MBA)非常勤講師、グロービス・マネジメント・スクール講師。また、国内大手メーカー、金融機関、流通、サービス、外資系企業などに対して、アカウンティング(財務会計、管理会計)、コーポレート・ファイナンスのマネジメント教育講師を多数務める。