ユニークな「プログラム」紹介(1):「英語研修 ~仕事で英語を使うために~」

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楽天やファーストリテイリングの英語公用語に代表されるように、社内での「英語」教育の動きが盛んになっています。弊社でも、大手化学品メーカ-の新入社員を対象にした、英語に関する研修を実施しました。

 

仮にA社としましょう。A社はアジアを中心にグローバル展開を志向しています。新卒採用は約100名。そのうちの7割以上は修士、博士号を持つ技術者や研究者の卵です。外国人も数人います。彼らの多くは近い将来、仕事で海外と関わりを持つことになるでしょう。

 

当初、A社人材開発担当者からの要望は、新入社員研修に英語教育のプログラムを加えたいという漠然としたものでした。しかも使える時間は一日(7時間)だけ。内定時点と新入社員研修終了後の2回、TOEICを受験させることだけは決まっていました。それから、A社とディスカッションを繰り返し、プログラムを詰めていきました。

 

最初に出てきたA社からのアイデアは、

「ネイティブ講師による英語漬けによるショック療法」というものでした。受講者は、今英語はできなくても基本的には優秀なので、自分ができないというショックを与えれば発奮して勉強するようになるだろうという仮説があったようです。それに対し弊社は、疑問を呈しました。発奮する人もいるかもしれないが、逆に苦手意識を植え付けてしまい英語が嫌いになる人もいるかもしれない。トータルでは費用対効果は高くないと判断したのです。

 

その後対案を出しました。たった一日で英語習得などできるはずもなく、必要なのは英語習得の重要性を気づかせることと、決して難しいことではないと思ってもらうこと。つまり、「英語習得は絶対自分のためになることだし、コツを飲み込めば意外にスムーズにできる」と納得させることをゴールに置いたのです。

 

その方向でA社の合意も取れました。では、どういうプログラムにすればそのゴールが達成できるか。アダットパートナー講師の青野仲達さんに相談しました。青野さんは、ハーバードでMBA取得後、マンツーマン英会話教室GABAを創業し、現在はビジネスブレークスクール大学教授として英語教育に取り組んでおられます。

 

青野さんとA社担当者と相談しながら、プログラムが固まっていきました。

100人を2クラスに分け、同時並行で実施(これは制約条件)

・午前と午後の2パートに分け、各パートにそれを得意とする講師が担当(つまり講師二人が昼休みで入れ替わる)

・ひとつのパートは、「英語習得のフレームワーク」を青野講師が担当。そこで、グローバル経済における英語の意義や、習得の「道具箱」を伝授

・もうひとつのパートは、日本人が英語習得で最も苦手とする「ヒアリング」と「発音」に絞って「コツ」を伝授。さらにグローバル・リテラシーのポイントも紹介(発音の専門家の竹村和浩さんに担当していただく)

・両パートとも、理科系の受講者が理解しやすいよう徹底して論理的に解説

・できるだけ一方通行の講義にならないように、ワークショップや演習を組み込む

 

大筋が固まったところで、A社から追加の要望がでました。やはり、少しはショックを与えるために、日本語厳禁で英語だけの時間も入れ込んでほしいというものです。そこで、青野さんと相談し、30分だけ英語しか話せないパートを加えました。では、何を受講者に英語で話してもらうか?A社の経営理念を題材にして、講師の質問に対して英語でその意味や解釈を話してもらうことにしたのです。ちなみに、事前にA社経営理念の英語版を配布しておきます。

 

こうしてA社と両講師と弊社の三者で詰めていったプログラムは、4月の新人研修の中で無事実施できました。真面目でシャイな受講者たちでしたが、想像以上に楽しそうに積極的に参加してくれたと思います。苦労しながらも必死に英語で質問に応える姿は、彼ら彼女らの今後の成長を予感させるもので、A社の将来が楽しみになってきました。受講者からも、英語学習へのモチベーションが高まったとの声が多く寄せられています。受講者たちとその企業の成長の予感を味わうことができるのが、この仕事の最大喜びかもしれません。

 

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このページは、ブログ管理者が2011年5月12日 10:17に書いたブログ記事です。

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