6月4日に映画「タクシー運転手」を観て

今週から、さまざまな業種で営業自粛要請が緩和されました。「自粛」の「要請」といういかにも日本的な対応でしたが、ほとんどの店舗などが要請を受け入れました。経営の厳しさは、想像に余りあります。せめて緩和直後にお店や施設を訪れようと、火曜のスポーツジム、水曜の英国料理店(屋外テラス席)、そして昨日は待ちに待った映画館。どこも、とても厳重に感染対策を施していたので、電車に乗るよりも遥かに安全だと感じました。

さて、緊急事態宣言明けに最初にどの映画館で何を観ようかと検索してみると、シネマート新宿で「タクシー運転手」を昨日(6/4)だけ上映しているのを発見。2018年に日本で封切られた韓国映画で、その評判を耳にしていたものの見逃していた作品。これはいい。その映画館サイトをよく見てみると、なんとこの映画だけ無料上映(2回)とのこと。自粛明け初日だけ半額割引している映画館はありましたが、なんと無料。お客さんに早く戻ってきて欲しいとの、その館の強い熱意を感じ、行くことに決めました。ただ、何でこの日だけ上映の「タクシー運転手」だけが無料なんだろうと思いつつ・・・。

無料だし混雑していないか心配で、もしぎゅうぎゅう詰だったらやめようと思いながら入ると、大丈夫。全席指定で、座席は一席おきにしか座れないので安心です。入りは4割くらいだったでしょうか。

さて、作品は評判通りとても素晴らしいものでした。1980年5月の光州事件を扱っています。光州事件は、当時日本でもわずかに報道されていた記憶はありますが、韓国では報道統制で1990年代までほとんど知られていなかったそうです。

以下はWikipediaの光州事件から。

1980年5月18日から27日にかけて大韓民国(韓国)の全羅南道の道庁所在地であった光州市(現:光州広域市)を中心として起きた民衆の蜂起[1]。5月17日の全斗煥らのクーデターと金大中らの逮捕を契機に、5月18日にクーデターに抗議する学生デモが起きたが、戒厳軍の暴行が激しかったことに怒った市民も参加した[1]。デモ参加者は約20万人にまで増え、木浦をはじめ全羅南道一帯に拡がり、市民軍は武器庫を襲うと銃撃戦の末に全羅南道道庁を占領したが[3][4]、5月27日に大韓民国政府によって鎮圧された[1]。

韓国政府は抵抗する光州市民を「スパイに扇動された暴徒」であるとした[5]。(中略)また、ドイツ公共放送(ARD)東京在住特派員であったドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター[7]が事件を報道した

作品は、このドイツ人記者と彼をソウルから光州まで乗せて取材に同行し、また空港まで送った韓国人タクシー運転手との友情を、実話に基づき描いたものです。お金目当てで光州まで乗せることにした運転手(ソン・ガンホ)が、光州事件の惨状を目の当たりにし苦悩していく心情が、ビンビン伝わってきました。素晴らしい演技!

それにしても、平和的にデモを続ける市民を容赦なく銃弾で鎮圧する軍隊の恐ろしいこと。とてもリアルです。軍と軍が戦闘する戦争映画はたくさんありますが、無抵抗の市民を武装した軍隊が攻撃する映画は、ほとんど観たことがなくショッキングで、魂が揺さぶられました。

映画を観ながら思い浮かんだのが、香港でのデモと、まさに現在進行中のアメリカでの警察官による黒人暴行殺人をきっかけにした、人種差別反対デモのうねり。そして、催涙弾で無抵抗のデモ隊を蹴散らし、そこを悠然と教会まで歩き聖書片手の姿を撮影させたトランプ大統領。それらがダブって見えました。

そして映画館を出た瞬間、もう一件あったことが、ふと思い出されました。天安門事件。あれは、たしか1989年6月4日だった。まさに、31年前の今日!なんと、今日は天安門事件の記念日だったのか・・・。あの日、テレビで観た「タンクマン」、向かってくる戦車の車列にゆっくり歩いていき、戦車の進行を妨げた素手の男性の姿がありありとよみがえってきました。彼の消息は不明だそうです。

「国家安全法」制定目前で、最後となるかもしれない天安門事件追悼集会を禁じられた香港、アメリカでのデモの連鎖とトランプ大統領の言動、

そして天安門事件の記念日、だから今日だけ「タクシー運転手」を上映、しかも無料で上映したのか、とその意味に気づきました。館内にもサイトにもそんなアピールは一切ありません。私は、映画館主の心意気に心を打たれました。やっぱり映画と映画館は素晴らしい!(もしかしたら、私の思い過ごしなのかもしれませんが)

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